これまでにもスウェーデンのシニアの住宅事情について何度かレポートしましたが、最近形態が多様化してきており、また、シニアの住居に対する考え方も変わってきたようですので、レポートしたいと思います。これまでは、大きな自宅にできるだけ長く住む、そしてその次は管理の行き届いた高齢者施設に住むというものが一般的でしたが、シニアの人たちの住宅事情も変わりつつあるようです。

二世帯住宅

まず始めに、ヨニーさん(70歳)とカーリンさん(68歳)の住宅事情についてみてみたいと思います。

数年前にヨニーさんとカーリンさんは息子さん夫婦の家に引っ越しました。住居が1階部分と2階部分に分かれている、いわゆる「二世帯住宅」への引越しです。日本では二世帯住宅はそれほど珍しいものではないかもしれませんが、スウェーデンでは子供が二十歳ごろに独立すれば親が子供の面倒を見ることもなく、また子供が年老いた両親の面倒を毎日みるというようなことはありません。そのため二世帯住宅というのは非常に珍しく、筆者もこれまでに聞いたことがありません。ヨニーさんの知り合いも当初この二世帯住宅に関してかなり懐疑的で、ヨニーさんは「本当にうまくいくのか?」とよく聞かれたそうです。しかし、カーリンさんは「息子夫婦の家への引越しは今までの引越しの中で一番良かった」といっており、ヨニーさんもそれに同意しています。そして今では自信を持ってうまくいっている言えるそうです。二世帯住宅ではお互いが助け合うことができるし、生活の面でとても経済的だと感じているようです。

前述のように二世帯住宅の概念はスウェーデンにはないため、スウェーデンでは非常にユニークな発想といえるのですが、このアイディアはアジアの伝統から思いついたそうです。ヨニーさんの義理の娘がベトナムから移住してきた中国系の方で、彼女から年老いた両親の面倒を子供がみるといったアジアの文化を知ったそうです。これからはスウェーデンにおいても、もしかするとこういった二世帯住宅が増えてきてシニアの住宅事情も変わってくるのかもしれません。

 

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ヨニーさん一家と二世帯住宅

写真:エメリー・アスプルンド

 

同居

続いてカイサさん(71歳)の場合をご紹介したいと思います。カイサさんはご主人を亡くし、寂しく思っていました。しかし、友人から「一人で住まないといけないってわけじゃないんだから」とアドバイスを受け、Facebook上で同居人の募集を始めました。多くの応募があったそうですが、カイサさんは23歳の女性、シモーネさんを選び、いまでは彼女と同居しています。ホームステイでも間借りでもない共同生活で、友達のような感じだそうです。一緒に食事をし、シモーネさんはカイサさんに何でも打ち明けることができ、色々相談に乗ってもらっているそうです。カイサさんも若い人と一緒に生活することで、気持ちを若く保つことができるので、他のシニアの人にも同じような共同生活をすることをすすめています。

こういった共同生活の需要は高まっているようで、最近、ストックホルム市とリンショーピング市で「Ett tak två generationer (一つ屋根の下に二世代)」というプロジェクトが立ち上げられました。大都市では住宅難であるため、住居を提供したい人(主にシニア)と住居の提供を受けたい人(主に若い世代)のマッチングを行うプロジェクトです。このようなプロジェクトを通して、シニアと若者の共同生活が今後増えていくことになるかもしれません。

 

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「どうやったら若い人たちはうちらの街に良い家を見つけられるのかなぁ?」

「どうしたらお年よりはできるだけ長く自分の家に住み続けられるのかしら?」

写真:プロジェクトホームページより

 

こじんまりと

最後は小さな家に引っ越したクリスチーナさんのケースを紹介したいと思います。

クリスチーナさんは最近小さな家に引っ越し、質素で清貧の生活を始めました。将来を見据えてのことですが知人からは、別に今引っ越さなくてもいいんじゃない、といわれたそうです。クリスチーナさんは掃除、メンテナンスなど家に関する仕事を減らし、経済的負担を減らすためにも小さな家に引っ越したと言っています。そして後悔はしていないと言っています。

クリスチーナさんは引越しのアドバイスとして、まず将来階段を上ることが難しくなるかもしれないので、一階部分に住むのが良いと言っています。また、引越しに際して、場所を節約するためにソファーとしても使えるベッドを購入したそうです。テレビは本棚への埋め込み式にして、邪魔にならないようにし、冬はそこに炎を映し出して、暖炉のように見えるようにしているそうです。植物は天井から吊るし、キッチンには果物を入れるカゴを天井から吊るしているそうです。それから、車輪がついた移動可能な台を2つ持っているそうです。これはどこにでも簡単に移動できるため非常に重宝しているそうです。捨てられものは全て捨て、地下の倉庫はからっぽ、「あとで使うかもしれないもの」も何も残していないそうです。まさに「足るを知る」を地で行くクリスチーナさん。こういったシニアの生活の仕方もあるかもしれません。

 

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クリスチーナさん

写真:ダン・ハンソン

 

まとめ

今回のレポートでは、新しいシニアの住宅事情についてレポートしました。シニアの住宅事情はこれまでのように画一的なものではなく多様化しつつあり、それぞれの人が自分にあったスタイルで生活していくようになっていくように思われます。また、そのためには快適に生活するための工夫をする能力、自分のスタイルに合った居住環境を見つけるスキルなどが求められてくるようになるのかもしれません。