今回のレポートでは、高齢者の孤独についてお伝えしたいと思います。以前にも(2016年2月のレポート)お伝えしましたが、また最近取り上げることが多くなってきたため、もう一度お伝えしようと思います。

■政策

スウェーデンでは2018年現在、4分の1の高齢者(約50万人)が孤独を感じていると言われています。それにもかかわらず、サポート体制はまだ十分ではないようです。高齢者の心の健康に関するサポートが十分でないことはスウェーデン国内の半数の自治体で高齢者の精神に関するサポート・治療ができるクリニックがないことからもわかります。

スウェーデン・ヨーテボリ大学の高齢者健康センターのスコーグ教授は、高齢者の心のケアが重視されていない理由として以下の3つを挙げています。

- 高齢者は若者と違い一人一人特徴があり、同じ方法・方針で対処するわけにはいかない

- 多くの精神科の先生・研究者は高齢者の精神に興味を持っていない

- 精神科の先生・研究者の数が不足しており、高齢者の精神まで手が回らない

スコーグ教授は各自治体に少なくとも一ヶ所は高齢者の心のケアができるクリニックがあるべきだと言っています。鬱が自殺の最大の原因であり、最も重大なことなので、高齢者の心のケアの専門家の存在が重要だと警鐘を鳴らしています。

スコーグ教授 写真出典:Wikimedia commons

こういったことを受けて、例えばスウェーデンの政党の一つであるキリスト教民主党はすべての自治体が高齢者専門の健康相談窓口を設けるべきだと言っています。80歳以上の独居老人に対して1億6000万スウェーデンクローナ(約20億円)の予算をつけるべきだと提案しています。すでにいくつかの自治体では高齢者のための相談窓口を設けていますが、キリスト教民主党の担当者はすべての自治体が同様に窓口を設け、孤独を減らし、生活の安全を高め、健康増進、必要な医療の聞き取りなどをするべきだと言っています。キリスト教民主党は現在下野していますが、高齢者の健康に関する政策に重点を置いており、影の内閣の予算において、上記のようなことを提案しています。その他にも高齢者関係の政策、予算を提案しています。

政権与党のスウェーデン社会民主労働党も対策を打ち出しています。孤独老人を減らすために2000万クローナ(約2.5億円)を体育協会に、1000万クローナ(約1.3億円)をアウトドア協会に、3000万クローナ(約4億円)をその他の孤独老人を減らすために活動しているNGO団体などに投資すると言っています。また、キリスト教民主党と同様に高齢者のためのいつでも連絡できるしっかりとした相談窓口を各自治体に設置すると言っていますが、具体的な財源は明らかにしていないようです。

児童・高齢者・共同参画担当大臣のレナ・ハーレングレン氏 写真出典:政党HPより

 

■ニルスさんの場合

5年前にニルスさんは奥様を亡くされました。それ以来悶々とした日々を送ってこられたそうです。孤独や鬱の感情が入れ代わり立ち代わりやってきたそうです。ニルスさんが参加している同じような境遇の人の集まり(病院内の一種のテラピー)に行って話をすると少し気持ちも楽になるそうです。奥様が亡くなられたときは自殺するようなことも考えられたようですが、心のケアを受けるためにお医者さんの勧めで、この会に入ったそうです。しかし、その会は病院が試験的に行っていた集まりで、病院の方針でこの夏に終わることになりそうだということです。現在何とか存続してもらうように署名活動をしているそうです。

ニルスさんは高齢者の孤独については政治家がイニシアチブをとることが重要だと思っているようです。ニルスさんの家の近くに新しく幼稚園が建てられたのを見て、高齢者のためにも高齢者が集まる「幼稚園」に相当するようなものを建ててほしいと思ったそうです。「同じ年代の男友達の多くが死んでしまいました。年を取ってなんで惨めな思いをしないといけないんでしょうか?私は常に誰かと接していたいと思っています。」とニルスさんは語っています。

■まとめ

今回のレポートでは、高齢者の孤独・心のケアについてお伝えしました。社会の関心が高まり、政府も積極的に動くことで、ゆっくりではありますが、少しずつ高齢者の心のケアができる体制が整っていくのではないかと思います。