北欧では一年間でもっとも重要な日といってもよい夏至祭を迎えました。夏至祭などの日は皆さんたくさんお酒を飲まれます。高齢者の方といえども例外ではありません。今回は高齢者の飲酒についてレポートしたいと思います。

 

女性高齢者の飲酒量の増加

スウェーデンのヨーテボリ大学の研究者グループが長期間にわたって生活スタイルの調査を行い、アルコールの消費の傾向が変化してきていることに注目しました。この調査で生活スタイルの変化に伴い、40年前と比較して女性高齢者のアルコール消費量が劇的に増加していることが分かりました。健康に影響を及ぼす量の飲酒をしている女性高齢者は、1970年代では0,5%でしたが、今日ではその数字は10%にものぼるそうです。研究グループは、昔は女性高齢者の飲酒は憚られる傾向にあったものが今日では寛容になっていることが原因ではないかと分析しています。

 

1970年代当時、研究者グループは1901年生まれの人を対象に調査を行いました。その後、20年代、30年代生まれの人々が対象となり、1944年生まれのまでの調査が始まっています。ヨーテボリ大学のスコーグ教授によると、女性高齢者のアルコール消費量は今後も増えていると予測されています。

 

研究対象になったグループの飲酒の習慣は色々な条件に影響されていると言えます。70年代に高齢であった女性たちは人生の大部分を配給に頼って生きており、その当時の女性高齢者のアルコール消費量は男性高齢者よりかなり少ないものでした。その後の世代は蒸留酒よりもワインの飲酒が推奨されつづけました。

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配給によってお酒などを受け取る人々

 

今日の70歳代以上の層のアルコール消費量の増加の原因は、人々がより一層継続的に飲酒をしはじめたこと、おそらく1週間に複数回の飲酒、ワインを楽しむようになったことだろうと前述のスコーグ教授は言っています。

 

飲酒の健康への影響

このアルコール消費量の増加がどのような結果になるのか研究者グループは分かっていません。しかし女性が男性よりアルコール感受性が高いこと、高齢になるほどアルコールを分解するのが難しいことは分かっています。これは、一般的には、高齢者の筋肉量が少ないため、全身にアルコールがまわりにくく、脳もアルコールに弱いからだといわれています。

 

スコーグ教授は、「高齢者が酔っぱらうことによって転倒し、骨折することも考えられます。肝臓も飲酒習慣に影響を受けると考えられますが、はっきりしたことは分かっていません。何はともあれ、高齢者のアルコール消費量が増えている事実がどのくらい危険なことなのか、研究を続けて行くことが大切だ」、と言っています。また、「70歳は2度目の20歳だと私たちは冗談半分に言ってます。つまり、これまで出来なかったことを重い病気になったり、歳をとりすぎてしまう前にやりたいと思うのです。外に出たり、旅行したり。」とも言っています。

 

今日の高齢者はとても生き生きしています。以前に比べ20年は若いといわれています。70歳の人は以前の50歳の人のようです。知的能力、身体能力があり、少ない手助けで済むというということが、より多くのアルコール消費に繋がっているという部分もあるようです。

 

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スコーグ教授 撮影:ヨハン・ヴィングベリィ(ヨーテボリ大学ホームページより)

 

国民健康保険庁の分析

スウェーデンの国民健康保険庁が取りまとめた資料によると、スウェーデンのアルコールに関連した高齢者(65-84歳)の疾病や死亡はここ15年の間増加傾向にあります。高齢者はアルコールを”薬”として、飲酒する傾向にありますが、それは推奨されるものではありません。国民健康保険庁によると、アルコールの知識をもったかかりつけの医療従事者が高齢者の飲酒習慣に注目し、問診などをする際に必ず飲酒について聞くことが重要だといっています。また、高齢者の飲酒による疾患を予防するためには、現在の中年世代を対象にした予防政策を行うべきだと提唱しています。

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まとめ

今回のレポートでは、スウェーデンの高齢者の飲酒習慣の問題を取り上げてみました。これまでに、高齢者の飲酒が生活の質の向上させる一つの習慣になりうるということが報告されたこともありましたが、行き過ぎた飲酒が健康を害し、アルコールによる死亡数を増加させることにもなります。今後、自治体、医療機関、老人介護施設などにおいて、どのような取り組みがなされていくのか注目されます。