今回のレポートでは、在宅介護、高齢者介護施設での改善についてお伝えしたいと思います。

 

■高齢者介護施設でのランチ

スウェーデン南部のヘルシンボリという街では自宅で在宅介護を受けて生活している人でも市内にある3ヶ所の高齢者介護施設でランチをとることができるようになります。高齢者の交流・新しい出会いを促進する機会になるものと期待されています。市の健康・介護委員会のヨニー・カトー・ハンソン委員長は「自宅でホームヘルパー利用している人にも他の人たちと会っていただき、一緒に食事をする機会を提供できることを嬉しく思います。「一緒に食べる」というのは、人と打ち解けるための最も自然な形の一つだと思います。多くの人が束の間の出会いの機会を得ることができればと思っています」と言っています。月曜日から金曜日までのランチタイムに15~20席が利用可能となる予定です。食事は食堂で提供されます。もちろん入居者も自室ではなく、この食堂で食事をすることができます。値段は70クローナ程度(850~1100円、スウェーデンの一般的なランチの値段1100~1200円と比べると良心的な値段といえます)になる予定だそうです。

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ランチが食べられるようになる施設の一つ

 

■犬が住める高齢者介護施設

介護の一環として高齢者がペットとして犬を飼うことは一般的になりつつあります。犬と一緒に過ごすことによる、癒しの効果も期待されています。また、犬と一緒に散歩などの運動することも期待されています。現在ストックホルム近郊のティーレソーという町に建設中の高齢者介護施設ヴィラ・バシリカでは犬も一緒に生活できるようになります。スタッフが犬の面倒も見てくれるそうです。そのため、現在、犬の面倒を見ることができ、犬アレルギーがないスタッフを募集中だそうです。担当者によると年齢が高くなるほど犬アレルギーはなくなるので、高齢の入居者の犬アレルギーは心配していないそうです。

また、この施設の庭に鶏小屋も作る予定だそうです。入居者は鶏小屋の中に入ることができ、鶏を見て、卵をとって、毎朝とれたての卵で朝食をとるということを考えているそうです。担当者によると、他の高齢者施設でも鶏小屋を作ったことがあり、入居者が鶏小屋を訪れることで過去の記憶をよみがえらせることができ、落ち着いた気持ちになることがわかっているそうです。

犬や動物好きの高齢者、スタッフにとっては朗報で、2018年1月に入居が開始される予定です。

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完成予想図(不動産会社ホームページより)

 

■改善のためのシステム作り

高齢者の介護を改善するためには関係する組織による管理が重要になってきます。スウェーデン中部の街スンツヴァルではフェーンスモモデルという管理方式がとられています。この方式を採用することによって、ホームヘルパーが自分の裁量で働けるような環境を作ったりすることができるようになったそうです。ホームヘルパーの仕事環境をよくすることは、介護を受ける人にとってもプラスとなります。

フェーンスモモデルという名前はスンツヴァル市内にある地区のフェーンスモン地区で最初に運用されたことに由来しています。スンツヴァル市では高齢者の介護の状況を改善するために、いわゆるトヨタ生産方式をもとにして開発されたリーン生産方式を用いて戦略を立てていました。仕事の優先順位決めや誰がその仕事を行うかなどを決める際など、組織にとっては影響があったものの、現場で働く人にはそれほど大きな影響はなかったそうです。かと言ってそれ以前に行っていた管理方法でも状況を改善することはできなかったそうです。それまでリーン生産方式を採用していたオーサ・スヴァン氏からリーン生産方式をサービス部門に特化した方法ともいえるバンガード方式が良いのではないかという提案があり、試してみることになりました。

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フェーンスモモデルの開発者の一人、オーサ・スヴァン氏

スンツヴァル市内のフェーンスモン地区の在宅介護で試されることになりました。スタッフの人数は33人、介護を受ける人は53~97歳130人でした。2012年に最初の試験運用を始め、2014-2016年に改良が施され、2016年夏から本格運用、スンツヴァル市全域で取り入れられるようになりました。

このバンガード方式を改良して作られたフェーンスモモデルでは何かを「変更(改良)」するためには知識に基づいていなければならないという考えに基づいています。このモデルでは何かを改良(実行)するために3つのステップがあります。それぞれの段階での内容は前の段階での結果に基づいています。組織の管理者とスタッフは共同作業で実際の問題を解決するために次の3ステップを一緒に行います。

1.チェック

現在の活動の把握。何が、何故起こっているのかを知る。まずユーザー視点から見始める。このステップのゴールはニーズにこたえるための知識を得ること。

2.プラン

小規模での試験運用。目的に合う結果を得るために違った方法を試してみる。ステップ1で得たニーズにこたえるための知識をもとにプランを作る。このステップのゴールは改良のために何をすべきかという見識を産み出すこと。そしてそのタスクはどのようにオーガナイズされるべきかを理解する。

3.実行

このステップではステップ2で生み出された新しいシステム、例えば役割、責任、サポート体制の変更を実行する。

このようなステップを踏んで管理することによって、介護現場の状況を改善することができたそうです。このフェーンスモモデルは今年(2017年)、スウェーデン南部の街ルンドにあるリビングスカ記念財団よりエルドレ賞(高齢者賞)を受賞しました。

■まとめ

今回のシニアレポートでは、介護の現場の改善についてお伝えしました。改善のためには一人一人ができる小さなことから始めたり、政治的な大きな決断、新しいアイディア・試みなど多角的なのアプローチが必要になると思います。今後も様々な面で、介護を受ける人の立場に立って、介護現場がさらに改善されていくことを期待したいです。