今回は高齢者への投薬に関するスウェーデン国内の状況についてレポートしたいと思います。スウェーデンでは不適切な投薬を防ぐための運動が行われています。高齢者に薬に関する知識を深めてもらい、不必要な投薬をやめるように促す運動などが行われています。

 

不適切な投薬

 

スウェーデンの健康保険委員会によると2005年からの10年間で75歳以上の高齢者への不適切な投薬の割合が41%減少したそうです。向精神薬を過剰に使用するケースが少なくなったそうです。また、抗精神病薬の使用量も減少傾向にあるそうです。しかし、抗精神病薬は確かな効果が確認できておらず、また副作用も考えられるにも関わらず、不安を取り除くためや徘徊などをする高齢者へまだ使用されているそうです。そこで、健康保険委員会は5種類以上の薬を服用している、75歳以上の高齢者に対しての投薬のルール作り、不適切な薬のリスト作りを行いました。ルール作成後も75歳以上の10人に1人は10種類以上の薬を服用していることがわかりました。

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写真: ウィキメディア・コモンズ

 

薬についての知識

 

「薬について考えよう」という運動で行った調査によると患者が薬のことについて理解しているほど、投薬に関する満足度が高くなる傾向にあるということがわかりました。「薬について考えよう」は現在高齢者向けに、オンラインで薬についての知識を深めるためのトレーニングを行っています。スウェーデン退職者機構、退職者協会および元国営の薬局が共同で行っているもので、現在高齢者への不必要な投薬を減らすために活動しています。高齢者が薬に関する知識を身につけることで、自分で薬に関することをある程度コントロール(たとえば不必要な薬を拒否する)できるようになることを目標にしています。

 

「今日の患者は薬の情報に加えて、医学的に正しい投薬がなされることを望んでいます。そういう意味ではこの取り組みは的を射たものといえるでしょう。」

 

と、同運動のトップを務めるラーシュ‐オッケ・セーデルルンド氏は言っています。

 

高齢の患者は医者の言うことに逆らえず、質問することにも抵抗があるのでオンラインでのトレーニングが役に立つと氏は考えています。このような取り組みを6年近く続けた結果、不必要な投薬が減ってきたようです。

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ラーシュ‐オッケ・セーデルルンド氏

写真:ホームページより

 

高齢者施設の取り組み

 

スウェーデン南部の都市、オスビーにある高齢者施設では入居者へ適切な投薬をするためのプロジェクトを立ち上げました。投薬をシンプルかつ確実に行うことを目標にしています。この施設ではスウェーデンのアルファ社が開発したe-レーケメーデル(e-薬)というシステムを利用して高齢者へ投薬を行っています。このシステムを利用すれば、たとえばインスリンの注入量が足りない場合は、アラームが担当の看護師、スタッフの携帯電話に届きます。

 

また、薬を渡した後はそのことが自動的に記録されます。以前は紙のリストを使っており、薬を渡したときに入居者にサインをしてもらうというシステムをとっていたそうですが、サインをし忘れてしまい、2度同じ薬を受け取るというようなミスもあったそうです。決められた時間に薬を飲まなければならない場合はアラームをセットしておくこともできます。時間が過ぎそうになった場合、過ぎた場合には通知が届きます。このシステムのおかげで、看護師たちは誰に、いつ、どれぐらい、何の薬をあげたかを把握しやすくなり、仕事の負担やミスが減ったようです。投薬の情報のほかにも入居者の情報にもアクセスでき、さまざまな情報をグラフで表せるようになっています。

 

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e-薬システムを利用する高齢者

写真:アルファ社ホームページより

 

 

スウェーデンでは高齢者施設の看護師が医者のアドバイスに基づいて入居者に渡す薬を管理しているケースが多くありますが、これまで入居者に過剰に薬を渡す傾向にありました。不必要な投薬を行わない方が良いとわかっていても、どの薬が必要ないのかは個人によるのでケースバイケースで判断することが難しく、そのまますべて渡してしまうケースが多かったようです。最近ではさまざまな市町村の高齢者施設の看護師が合同で勉強会を開いて、薬に関する知識を増やすための活動も行っています。

 

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勉強会の様子

写真:Nestorホームページより

 

 

まとめ

今回はスウェーデン、投薬の事情、不必要な投薬を防ぐための取り組みを紹介いたしました。薬をとりすぎたために逆に不健康になってしまっては本末転倒ですので、薬を上手に利用し、過剰に飲むことを避ける方向へと進んでいるように思います。