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ヨーロッパ高齢者事情研究のため、2007年2月ストックホルムシニアライフ研究所を開設しました。
現地から最新の高齢者事情をレポートします。

シニアのためのアクティビティ(1)

松下泰志(Taishi Matsushita: 2012/1-), セスレ真美(Mami Sessle: 2011/11-2011/12),
ローベリ亜佐子(Asako Raberg: 2011/1-2011/10), ダールマン容子(Yoko Dahlman: 2007/2-2010/12)   

スウェーデンの高齢者たちは、積極的に外出をしたり、サークルやグループに参加して活動を行ったりして、比較的活動的であるというイメージが強い。スウェーデンには、PRO(=Pentionärernas RiksOrganisation)=全国高齢者組織という、高齢者(=年金生活者)のための組織がある。その組織によって高齢者を対象とした様々なコースや活動が行われている。
実際にどのような活動が行われているのか、具体的なPROの活動の様子を紹介したい。

ストロムスダット市のPRO

最新の調査によると、現在では都心でも地方でも同じくらい様々な種類の高齢者向けアクティビティが存在することが明らかになった。スウェーデンの小さな自治体(人口約5780人)であるストロムスタッド市の現状を見てみると、それが事実であることが明らかになる。
ストロムスタッド市では、35種類以上の団体や組織が何らかの形のアクティビティや教室、サークル活動をシニアのために用意している。PROはそういった団体のうちの一つである。以下はPROによるアクティビティの記事である。

毎週木曜はカーリング

海岸沿いに見える水面にはうっすらと氷が張っていて、空は明るい青色からオレンジへと移り変わろうとしている。ちょうど冬から春へと移り変わろうとしているさわやかで澄んだ海の空気が満ち満ちている。

海岸からそう遠くないところに『Folkets Hus(公民館)』が見える。Folkets Husの駐車場には今、かろうじて一つの空車スペースがあるかないかといったほど、沢山の車が集まっている。この日は木曜日で、ストロムスタッド市のPROが『カーリング』集会を行っている日だ。
長年にわたって行われているこのPROのカーリング集会はシニアに大変人気がある活動の一つである。このカーリングは週2回行われており、いつも定員いっぱいである。このカーリングは、他の集会・活動同様、いつも恒例の『Fika』(=コーヒーや紅茶とケーキなどでのんびりおしゃべりなどすること。スウェーデン人の習慣の一つ)から始められる。

集会所の中にはいくつかのテーブルが用意されている。それぞれのテーブルはきれいに飾り付けられ、コーヒーやケーキが用意されている。またサンドイッチなどの軽食も用意されている。ストロムスタッド市のPROの代表であるロルフ・マーティンソンが開会の挨拶をする。
「今度のスウェーデン西海岸でおこなわれるシニア・マットカーリング大会には、6つのチームが出場します。来週は、ヘノンス市のPROとの試合がありますので、今日は皆さん十分練習しましょう! 前年、私たちはこのマットカーリング・カップで優勝することができました。今年もぜひ、がんばりましょう。」

ブリギッタとグンネルがポイントを計算している。ブリギッタは練習が一番楽しいというがグンネルは試合が好きだ

集会所には長いグリーンのマットが2本敷かれている。その上には、黄色と青の「カーリング・ストーン」が用意されて、練習の開始をまっている。
「どなたと組んで練習していただいてもいいんです。基本的には毎回、違うパートナーと練習することになります。パートナーは、カードでの抽選で決めます。今回は、私はアストリッドとペアになります。」
ロルフは自分のテーブルに座っている女性たちに微笑みながら説明をする。この会の目的は、全ての参加者が楽しくカーリングを続けることができる、ということである。
大会は一つの目標ではあるけれど、もっと重要な目標は、参加者同士が交流をもつということである。

「カーリングの練習をすることは、他の人と競い合うことでもありますが、同時に自分自身を鍛え、また常に向上をめざすことでもあります。他の団体と試合をすることは、楽しみの一つでもあります。」
この会のもう一人の主催者メンバーであるラーシュ・ラーソンはそう語る。
ラーシュは現在のサンボ(Sambo=結婚はしていないが、同棲している相手)と一緒に、このカーリング・グループに参加している。
「彼女はノルウェーのサルプスボルグ出身です。5年前にここに引っ越してきてから、PROのアクティビティに参加していて、そこで私たちは知り合ったのです。初めて出合ったのは、PROのダンスアクティビティでした。」
そういってラーシュは遠くにいる彼のパートナーを指さした。彼女は、今日は別の人と組んでカーリングの練習を行っている。

新しい人々との出会い

『郊外における集会活動』というテーマでの研究結果を、つい先日発表したラーシュ・スベンソン博士に話をうかがった。彼は、長年にわたり様々な集会場所や集会活動について研究し、特に高齢者(年金生活者)を対象とした活動やアクティビティを専門に研究を続けてきた。例えば、スケー市で行われている『男のための料理教室』やストロムスタッド市郊外のロンメランダ町での『芸術・手芸グループ』などである。その研究を通してラーシュ・スペンソン博士はストロムスタッド市PROの代表、ラルフ・マーティンソンと出会った。

ラーシュ博士は語る。
「ロルフはこの自治体のあちこちを回って、色々なアクティビティをやっているんだ。基本的に、この街では、高齢者に適した何らかの活動が毎日どこかしらで行われていると言うことができる。活動的な高齢者たちは街のあちこちに行って、自分に適した、自分が興味のある活動にあれこれ参加している。ほとんどの場合、それぞれの集会所にはほぼ毎回参加しているキーグループが存在する。彼らはお互いのことを本当によく知っている。
でも、例えばこのカーリングのようなアクティビティは、すでに知っているお互いのことをさらに知るだけでなく、新しい人たちと知り合うことができるという可能性を持っている。」

マット・カーリングをすることは、ただ単に自分の時間を費やすということだけではなく、周りの人たちと会話をしたり、仲間を作ったりするということでもあるということだ。確かに、このマット・カーリング会場を見渡すと、あちこちでコーヒーカップを持っておしゃべりをしている姿が見受けられる。

「ここでは、皆がお互いをからかったり、お互いにぶつかっていったりするんです。もちろん、いい意味でね。」
と、ロルフは言う。確かに、この集会所の雰囲気は、すばらしい。人々はいい意味で、ふざけあったり、からかったり、口論しあったりしているのだ。

ストロムスタド市のPROは400人ものメンバーを抱え、メンバーを対象に、様々な活動・アクティビティを提供している。例えばこのマット・カーリング、その他にも文学サークル、ウォーキングサークル、チェス、料理教室、コーラス、モーションダンス、そして夏には屋外でのゲートボールなどもある。どのアクティビティにもかなり多くの参加者があり、1回の活動の参加者が50?60人になることもしばしばある。

また、旅行ツアーなども行っている。すでに15年間もPROの会員であるアストリッドは、昨年行われたオーストリアのサールビーチへのツアーの様子を楽しそうに語ってくれた。
「もう何年も経験していなかったような、すばらしい旅行だったわ。沢山笑ったり、歌ったりしたわ。参加者のうちの何人かはコーラスグループのメンバーだったから、すぐに合唱することになるのよ。そして、ロルフのように、話をするのが上手な人がいると、いつでもお話大会になるのよ。」

ロルフはツアーのイベントの一つであったロープウェーで山頂まで行き、皆で一緒に山を下って谷へ歩くという『冒険』の話をしてくれた。
「あれはすばらしい経験だったけど、やっぱり多くの参加者にはちょっと難しすぎたようだ。なにせ、参加者の年齢は本当に多岐に渡るからね。でも、皆が元気に、山を下ることができたことはすばらしかった。」

このようにPROのメンバーは、様々なアクティビティを楽しんでいる。
次回は、いよいよカーリング練習の模様をリポートします。

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