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ヨーロッパ高齢者事情研究のため、2007年2月ストックホルムシニアライフ研究所を開設しました。
現地から最新の高齢者事情をレポートします。

シニアのためのアクティビティ(4)

松下泰志(Taishi Matsushita: 2012/1-), セスレ真美(Mami Sessle: 2011/11-2011/12),
ローベリ亜佐子(Asako Raberg: 2011/1-2011/10), ダールマン容子(Yoko Dahlman: 2007/2-2010/12)   

 前回は、絵画グループを紹介いたしました。今回もアクティビティ編(4)として、スウェーデン王室のシルビア女王についてご紹介いたします。

スウェーデン王室

スウェーデンの王室は、『開かれた王室』として国際的にも有名である。国王初め王室の方々は頻繁に公共の場に姿を現し、様々な会合で一般の人々と同席したり、一般の人々とともに慈善活動を行なう機会も少なくない。スウェーデン王室は一般市民の間でとても人気が高く、空の上の特別な存在というよりも、自分たちを代表する身近な存在として親しまれている。

中でも、シルビア王妃はスウェーデン人が最も好きな女性のトップ3に入るほどの人気だ。昨年12月に、このシルビア王妃は65歳の誕生日を迎えられた。スウェーデンでは、王妃といえど65歳=『定年退職の年齢』と考えられている。シルビア王妃が、65歳になったことについてのインタビューがスウェーデン通信社によって行われ、その様子が多くのテレビ番組や新聞で公開された。シルビア王妃の語る言葉は、スウェーデンのシニア世代を代表しているように感じられる。

国民からの人気の高いスウェーデン王室 

シルビア王妃のプロフィール

シルビア王妃は実はもともとスウェーデン人ではない。ドイツ生まれの、ブラジル育ちという王族としては変った経歴の持ち主だ。王室に入った初めは、ドイツ人と言うことでスウェーデン国民の間に拒否反応もあったが、率直で明るいその人柄で人気を高めた。  
 
以下は、シルビア王妃の簡単なプロフィールである。
 

名前
生年月日
出生地
シルビア・ルネーテ・ソンメルラース
1943年12月23日
ドイツ国ハイデルベルグ市
1947年(4歳)
 
1963年(20歳)
1965-1969年(22―26歳)
 
1971-1973年(28?30歳)
 
1972年(29歳)
 
1976年(33歳) 3月
 
1976年(33歳) 6月
1977年(34歳)
1979年(36歳)
1981年(39歳)
- 家族とともにブラジルのサンパウロへ引っ越す。10年間のブラジル生活の後、再びドイツへ戻る。
- ドイツ、デュッセルドルフ市の高校卒業。
- スペイン語通訳の教育を受ける。その後、ミュンヘンにあるアルゼンチン領事館で勤務。
- ミュンヘンオリンピックとその後のオーストリア、インスブルックの冬のオリンピックで働く。
- ミュンヘンオリンピックでの仕事を通して、当時スウェーデン時期王位継承者であったカール・グスタフ現国王と出会う。
- 4年間の交際を経て、スウェーデンのカール・グスタフ王子と婚約
- ストックホルムの大聖堂にて結婚式を行う。
- 第一子、ビクトリア王女を出産。
- カール・フィリップ王子を出産。
- マデレーン王女を出産。

 

児童福祉と認知症への活動

シルビア王妃は、チャリティー活動に非常に熱心で、スウェーデン国内の数多くの福祉団体を後援し自身でも活動を行っている。

代表的なものに、1999年に設立した世界中の子供たちの環境を改善を目的とした『World Childhood Foundation(世界子供基金)』 http://www.childhood.org/ がある。王妃は少女時代にサンパウロのスラムを見た経験から、児童福祉、特に児童ポルノ禁止の熱心な活動家である。この国際団体で、王妃は名誉会長となっている。

 
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World Childhood Foundationのオフィシャルページ
 
また、国王一家の住むドロットニングホルム城で行われている『シルビア・ホーム』も王妃自身の取り組みの一つである。
 
『シルビア・ホーム』の目的は、認知症分野における科学的研究を進め、その教育、トレーニング、ケアなどを広めていくことを目的としている。王妃はその団体でも実質的な会長を務めている。
 
さらに、カール・グスタフ国王とシルビア王妃が1977年に始めた王室の結婚式基金などにより、障害を持つ子供たちのスポーツに関する研究を支援している。                                     王妃は、聴覚障害者とのコミュニケーションを簡単にするために、手話を取得した。
 

 シルビア王妃のインタービュー

2008年12月23日、シルビア王妃はスウェーデンの定年退職年齢である65歳の誕生日を迎えられた。
王妃自身はその誕生日が公的にはそれがそれほど特別なことだとは考えていないため、特に公的な祝賀イベントなどは行われなかった。
 
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スウェーデン王国シルビア王妃
 

複雑な気持ち

スウェーデン通信社は、シルビア王妃の仕事部屋でもあるストックホルム城の訪問室で、今回のインタビューを行った。
部屋の壁には現国王の祖母、マルガレータ王妃が書いたという絵画が飾られていた。
また、部屋中に小さなクリスマスの飾りやスウェーデンのクリスマスを代表する花であるヒヤシンスが飾られている。
 
王妃はこの年65歳となられるが、定年退職の予定は今のところないと語られた。
 
「今は仕事を減らす余裕がないと感じます。時には、自分のプライベートや、家族とすごす時間がもっと欲しいと思うときもあります。スウェーデン国内も、もっともっと旅行をしたいですし。定年退職の年齢を迎えるということで、少し複雑な気持ちです。時にはとても良いことのように感じられますし、同時に私の経験から出来ることがまだまだ残っている、という風にも感じます。」
 
王妃は、高齢者に対する考え方は、彼女自身が若かったときと比べてずいぶん変ったと思うと話す。
 
「私の両親や、祖父母の時代には、60歳、70歳といえば、本当に高齢という感じでした。でも、私たちは今はそのように感じません。少なくとも、私自身や、私の友人達はね。でも、もしかしたら子供たちはそう思っているのかもしれませんね。」
 

孫を待ち望む気持ち

「王妃は、お孫さんを待ち望んでおられますか」という質問に対し、「待ち望まない人など、いるのでしょうか。でもそれはいつになるのか、まったく予想もできないことです。私の友人で、孫がいる方たちを見ると、もちろん本当に素晴らしいと思います。孫というのは、人生のデザート、といえるかもしれませんね。いつも世話をしなければならないわけでもなく、ただ楽しむことができる存在ですもの。」とお話された。
 
また、次期王位継承者であるビクトリア王女の婚約の有無が、メディアで話題になっていることにふれると、「私は、彼らのプライベートを尊重するべきだと思います。もちろん、親としては私たちの子供が皆幸せで、彼らが心から愛する人と一緒になれるように願っています。それが、一番大切なことだと思います。」(このインタビューの2ヶ月後の2009年2月、ビクトリア王女は婚約を公的に発表された)
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 7年間の交際を経て、2009年2月に婚約を発表された王位継承者ビクトリア王女
 

経済危機について

2009年の世界経済に王妃は主に希望を感じているという。
経済危機やそれによる影響は減っていくと考えておられる。
 
「世界中が今、私たちの世代では経験しなかったような経済危機で苦しんでいます。これは、第1次世界大戦後と同様な感覚ではないかと思います。何かが起こっているけれど、コントロールすることができず、またそれがどこへ向かっているのかもわからない、というような。アメリカというある一つの国で起こった事の影響が、こんなにも早く、こんなにも多くの国に広がってしまうということは、ただならぬことだと思います。世界中が、根本からぐらついているようにも感じます。政治家たちが責任を持って経済をサポートし、危機を回避しようと努力していることは前向きなことだと感じます。EU内での対応もすばやく、様々な解決策について協議を重ねていることも、好ましいことだと思います。」
 

シルビア王妃の活動

王族として公的にある義務とは別に、王妃は様々なことを行っている。「World childhood foundation」はその代表的なものだ。
 
「国王と私は、ミュンヘンオリンピックでの身体障害者の方々との交流を通し、それがいかに大変なことがということを強く感じました。そして特に身体障害を持つ子供たちに何かをしたいと考え、1977年に『王室結婚式基金』というのをはじめました。それにより、身体に障害を持つ子供たちをサポートしています。」
 
また、高齢者のケアと認知症という分野も、王妃が非常に関心を持っていることのひとつだ。
「他の国々と比べれば、スウェーデンは高齢者のケアをよく行っていると思います。」
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 現国王カールグスタフとシルビア王妃
 

まとめ

ドイツからの移民という経歴を持ちながらも、スウェーデンの国民たちから親しまれているシルビア王妃。
気さくで明るい人柄と、気取らない言動、活発な行動力が、国民をひきつけている。
また、福祉や慈善活動に熱心な王妃だからこそ、同世代のスウェーデン人たちから多くの支持を集めているようにも思われる。
スウェーデンにおいて、65歳は定年退職年齢であり、この年齢から人々はいわゆる『シニア』になると考えられている。
ほとんどのスウェーデン人は、65歳を迎えると会社を退職し、それ以降の時間は自分の趣味や家族との時間に費やす。
王妃が仕事を『退職』するのは、もう少し先のことになりそうだが、趣味と家族の時間を待ち望む姿は、スウェーデン人を象徴しているのではないだろうか。

 

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