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ヨーロッパ高齢者事情研究のため、2007年2月ストックホルムシニアライフ研究所を開設しました。
現地から最新の高齢者事情をレポートします。

自治体の高齢者ケアレベル評価

松下泰志(Taishi Matsushita: 2012/1-), セスレ真美(Mami Sessle: 2011/11-2011/12),
ローベリ亜佐子(Asako Raberg: 2011/1-2011/10), ダールマン容子(Yoko Dahlman: 2007/2-2010/12)   

 高齢者ケアバロメーターとは

スウェーデン年金連合会(PRO)は、2009秋から2010年春にかけて『高齢者ケアバロメーター』(Aldrebarometer)という全国調査を行った。スウェーデンでは、高齢者のケアや医療、介護や住居に関することはコミューンと呼ばれる自治体レベルの管理の下に行われている。
 
現在スウェーデンには全部で290のコミューンがあり、この『高齢者ケアバロメーター』の調査はそのうち236のコミューンで行われた。その目的は、各コミューンの高齢者の生活に関する現状を理解し分析するとともに、それぞれのコミューンが将来的に高齢者ケアや住居に関してどのような改善を行っていけばよいのかを明らかにするということである。
 
 
スウェーデンには今日、290のコミューンがある(色分けは郡レベル)。
 
調査は、全国の約41万人の年金連合会の会員たちが、自身が住むコミューンの高齢者ケアに関しての33分野についての様々な質問に共通のフォーマットで1?6の数字を使ってスケール評価を行うという形で行われた。
 
この調査に関して年金連合会の会長カート・ペーション氏は次のように語った「コミューンによっては、高齢者がより住みやすくするためにかなりの大掛かりな改善を行う必要があることがわかりました。そして同時に、お互いのコミューンから学ぶべき見本となるような好例もたくさん見つけることができました。」
 
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スウェーデン年金連合会会長のカート・ペーション氏
 

調査内容

この調査の内容の主要分野は以下の8つである。
 
1.住居から通常住宅、老人ホームおよびサポートホーム(Trygghetsboenden)
2.建物や環境へのアクセシビリティ
3.交通から公共交通機関と送迎サービス 
4.コミュニティとレクリエーション 
5.行政への参加及び影響力
6.年齢差別 
7.情報とコミュニケーション
8.高齢者ケア、医療、サービス
 
以上8つの主要分野は、WHO(世界保健機関)が行っている『高齢者にやさしい街(Age Friendly Cities)』の調査に使われた評価分野とリンクするように選ばれた。またこの主要分野はさらに33の細かい分野に分類された上で調査が実施された。
 
評価は、上記8分野についてコミューン議会が定める「決定」と「条例」を客観的に評価するものに加え、より主観的な評価をするものの両方が行われた。これらの主観性は年金連合会の会員たちがそれぞれのコミューンで高齢者として生活する中で得られる経験及び知識に基づいて回答される。
 

結果の分析

今日、スウェーデンのほとんどのコミューンは、基本的に高齢者にとって住みやすい環境ということができる。しかし、もちろんそこには難しさも存在し、さらにコミューン間で提供するサービスやそのクオリティに差があるという事実もみられる。
 
高齢者が生活しやすいコミューンという評価には、高齢者ケアが充実しているという点だけでなく、例えば公共交通機関を利用しての移動が高齢者にとってどのくらい簡単かということや高齢者に役立つ情報をどのように公開され管理されているかという点なども、大きく影響してくる。また、一つのコミューンが、ある特定の分野に関しては高評価を得、他の分野では逆に低評価を得るという結果もみられた。
 
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調査結果で最も高い平均ポイントを得た4つのコミューンは表彰を受けた。
 
今回の調査は高齢者の生活に関するかなり広範囲な調査となり、その結果で最も高平均ポイントを得たコミューンは表彰を受けたが、調査の本来の目的は全国で一番よいコミューンを決定するというものではない。それぞれのコミューンにはよい部分もあり、不足している部分もある。
 
また、あるコミューンがどのくらい住みやすいかということは、評価を行った個人の感覚によるものが多いともいえる。高齢者は一般に多種多様な意見を持つグループで、個人個人が異なる要望やニーズを持っている。例えば、介護の必要性が高い高齢者にとっては高齢者介護の分野が重要となってくるし、逆に健康な高齢者にとってはコミュニティやレクリエーションなどの要素が重要となる。
 
調査を行った年金連合会は、今回の調査結果がコミューン間で様々な良い実例を交換し、インスピレーションを与え合う機会となるよう望んでいる。
 

コミューン間の比較分析

参加した236コミューンのうち、26コミューンは平均4.5ポイント以上の高ポイントを取得し、16のコミューンは3ポイント以下となった。しかし、この低い平均ポイントを得たコミューンでも、ある分野に置いては非常に高い評価を得ており、また逆も然りである。どのコミューンでも低いポイントの分野は改善の余地が大いにあるということだ。
 
コミューンごとにポイントが表示された詳細結果は以下、ホームページ資料で見ることができる(スウェーデン語)。
 
今回の調査で高ポイントを取得したコミューン間の共通点についての分析も行われた。分析ポイントは、コミューン議会の政党状況、コミューンの大きさと人口密度そしてコミューン内の定年者(65歳以上)と80歳以上の高齢者が占める割合という点についてである。
 
○コミューン議会の政党状況
 *分析の結果、与党連合、野党連合のどちらの政党がコミューン議会の多数を占めているかということは調査結果には影響を
  与えてないと言えることがわかった。
 
○大きさと人口密度
 *高齢者のニーズにどのくらいコミューンが対応しているかという結果に関してコミューンの大きさはほとんど影響を及ぼしてい
  ないという結果がでた。さらに、全体的な評価に関しては人口密度もほとんど影響を及ぼしていないといえる。
  しかし、ある特殊分野に関して詳しく見ていくと、部分的な影響があると考えられる。
 
 *以下は小さく人口密度の低いコミューンがより高いポイントを取得している例である
  ・高齢者住宅への入居のしやすさ
  ・コミューン、郡、または商業活動の対応の早さ
  ・コミューンの代表電話にかけたときにプッシュテレフォンを使わずに必要な担当者につながること
  ・高齢者ケアのスタッフ構成が長く継続すること
 *以下は大きく人口密度の高いコミューンがより高いポイントを取得している例である
  ・公共交通の利用しやすさ
  ・高齢者協議会への意見の反映しやすさ
  ・改装サービス(=高齢者が家に住み続けられやすいように家の内装を改装するサービス)の利用しやすさ
 *定年者(65歳以上)および80歳以上の高齢者の人口割合
  ・その結果に一貫性はみられない。
 

まとめ

このようにして、スウェーデンの年金連合会は、ケアを利用する高齢者たちによりコミューンの高齢者ケアのレベル評価を行い、その結果を一般に公開した。
 
それにより、高齢者ケアを提供・管理する行政側も改善点を明らかにすることができ、またケアを受ける側の高齢者自身やその近親者たちも自分たちのコミューンのケアが他コミューンと比較してどのようなレベルなのかを客観的に知ることができる。
 
行政主体の調査とは異なる方向からの調査や結果分析を行うことにより、より幅広い方向からの判断を行うことができる。一般の高齢者たちの声を行政に反映させることにつながる、とても有効な手段だと思われる。

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