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ヨーロッパ高齢者事情研究のため、2007年2月ストックホルムシニアライフ研究所を開設しました。
現地から最新の高齢者事情をレポートします。

高齢者の住宅事情(6)

松下泰志(Taishi Matsushita: 2012/1-), セスレ真美(Mami Sessle: 2011/11-2011/12),
ローベリ亜佐子(Asako Raberg: 2011/1-2011/10), ダールマン容子(Yoko Dahlman: 2007/2-2010/12)   

スウェーデンの高齢者住宅

現在、スウェーデンに住む高齢者たちが老後の住居として選ぶ事のできる住宅形態は4つある。

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上記のうち、第2と第3番目のものは「特別住宅」という言葉で統合されている。
 
1992 年から使われている「特別住宅」という概念は以下の特徴を持っている。
・社会サービス法により入居の決定が行われる。
・看護師による医療が行われる。ただし医師は含まれない(医師による医療は県の職務である)。
・賃貸契約が行われ、賃貸法の適用を受ける。この結果、原則的に死ぬまで住み続けることができる。
・収入に応じて、家賃補助が行われる(社会保険庁担当)。
 
「特別住宅」は半永久的に居住の可能なものとショートステイ用のものに分けられ、これまでは最も一般的な高齢者住宅の形態と考えられてきた。しかし1980年代から90年代にかけては、第4番目の介護の必要な高齢者も自立しながら生活することができる24時間介護付の「サービスハウス」が人気を集めてきていた。
 

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ストックホルム市のサービスハウスの外観

1970年代後半から1980年代にかけてたくさんの「サービスハウス」が建設され、「特別住宅」にとってかわる高齢者の住居として人気を集めてきた。「サービスハウス」に入居したのは、住んでいる住居にエレベーターがないなどの理由により生活が不便であった高齢者が多い。

サービスハウスの変化

「サービスハウス」の状況は1990年代から大きく変化してきた。今まで「サービスハウス」の入居の最も一般的な理由の一つは、住居のアクセスであった。

しかし一般住宅のスタンダードの向上、住宅改造、ナイトパトロール、緊急呼び出し電話、在宅看護などの充実により、介護度が高くなっても自宅に住み続けることが可能になった。また「サービスハウス」の居住者が徐々に高齢化して、介護度が高くなり、また介護度の高い入居者が増える傾向がある。

しかし「サービスハウス」の基本構造は普通のアパートであるため、グループ介護のために設計されていない。このため「サービスハウス」を廃止し、一般住居である「高齢者住宅」に変更する市も出てきた。

スウェーデン政府は、特に「サービスハウス」の減少が大きな問題であるとして調査委員会を設置し、2007 年12 月には中間報告書が出された。それにより、「サービスハウス」に代わる、より利用しやすくより現代の高齢者に適切な住居が必要とされていることが明らかとなった。

そこで政府は、「安心住居(Trygghetsbodende)」というものを提案した。この「安心住居」では介護職員への連絡が24時間可能で(介護職員が建物に常に待機しているわけではない)、また共通のアクティビティーなども用意されている。建物内には、一緒に食事をする共同の食堂や住人が自由に使用する事のできるレクリエーションルームなどもある。

サービスハウスと異なる最も重要なポイントは、入居に関して市の福祉局が関与しないということである(行政認定が必要ではない)。入居対象は主に自立して生活できる75歳以上の高齢者で、特別住宅のように24 時間介護が必要な高齢者ではない。そして必要な場合、介護はホームヘルプとして提供される。安心住宅に入居するための順番待ちには70歳から登録することができる。

安心住居 (Trygghetsboende)

ストックホルム市は2009年の秋から4つの「サービスハウス」(Vasastan区の“Vaduren”、 Rinkeby区の”Rinkeby servicehus”、 Hagersten区の”Kastanjen”、 Alvsjo区の”Langbroberg”)を「安心住居」へ変える改造を行った。

また今後さらに6つの「サービスハウス」も「安心住居」へと改造される計画が決まっている。ストックホルム市の高齢者担当弁務のエバ・サミュエルソン氏は長期的(約10年間をかけて)にはストックホルムの全ての「サービスハウス」を「安心住居」へ改造する予定であると語っている。

2010年の市の予算計画にはさらに5つの「サービスハウス」を「安心住居」へ変えることが提案されている。ストックホルム市のホームページで「安心住居」は以下のように説明されている。

・「安心住居」はストックホルム市に住民登録している人々の中で75歳以上の必要とする人々にご利用いただけます。
・申し込みには市の福祉局からの入居許可は必要ありません。
・入居申し込みの順番待ち登録は70歳から行うことができ、75歳より入居が可能です。
・入居可能なアパートはストックホルム市の住宅委員会(Bostadsformedling)が、順番待ち登録の順に提供を行います。ただし、優先入居の規約に従い、医療的または社会的要因により優先的な入居が行われることもあります。
・全てのアパートには、安全アラームが設置されています。
・アパートでは、共通の食事時間に参加することができますが、レストランが併設されているということではありません。
・共通のレクリエーションルームを使用する場合の使用料金はアパートの各管理会社へ家賃の一部という形式で支払うことになります。

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ストックホルム市の公式ホームページの安心住居イメージ写真

民間企業による安心住居

市の設立する安心住居とは別に、民間企業も安心住宅の設立へ動き出している。北欧最大級の建設会社PEABはシニア向けの安心住居をコンセプトにしたアンネハウス(Annehem)の建設・販売を始めた。このアンネハウスは地方自治体や不動産会社との協力により、建物内の介護サポートサービスやアクティビティへのアクセスを可能としている。

月の賃貸料金は例えば1LDKの広さの部屋は6000kr?8000kr(=約78,000円?104,000円(1KR=13円))を予定されている(2010年6月現在)。ストックホルム市の普通の賃貸アパートの料金相場とほとんど同じ程度なので良心的な料金設定とも考えられるが、自治体の提供する「安心住居」の場合、月の料金が600?900kr(=約7,800円?11,700円)ということを考えるとかなり高額と思われるかもしれない。

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PEAB社が提案する安心住居のイメージスケッチ

まとめ

国民の高齢化が進み、健康な高齢者が増えているスウェーデンでは、つねに変化を続ける高齢者の状況にタイムリーに対応できるように、公民一丸となって対応策を検討している。従来の高齢者施設を利用し、現代の高齢者により合った形の高齢者のための住居への改善を行う。そのような改善を常に行い続けることが、高齢者にとって住みすい先進国でい続けるためのポイントなのだと思われる。

ただし、この「安全住居」への入居が人気が出れば出るほど、入居までの順番待ち時間が長くなることが予想されるため、それをどのように解決していくかが注目されている。

 

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