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ヨーロッパ高齢者事情研究のため、2007年2月ストックホルムシニアライフ研究所を開設しました。
現地から最新の高齢者事情をレポートします。

高齢者にやさしい街コンペティション

松下泰志(Taishi Matsushita: 2012/1-), セスレ真美(Mami Sessle: 2011/11-2011/12),
ローベリ亜佐子(Asako Raberg: 2011/1-2011/10), ダールマン容子(Yoko Dahlman: 2007/2-2010/12)   

 高齢者にやさしい街 コンペティションとは

2010年3月、ストックホルム中心街にあるカフェ・オペラというレストランで、「2009年高齢者にやさしい街コンペティション」の授賞式が行われた。このコンペティションは、スウェーデン年金連合会(SPF)の主催で行われたもので、様々な視点から、2009年の1年間において、スウェーデン全国の290のコミューン(地方自治体)のうち、どこがもっとも高齢者にとって住みやすく生活しやすいコミューンであったかを比較し競うものである。
 
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長い歴史を持つストックホルムの人気レストラン、カフェ・オペラ。
 
スウェーデンでは、高齢者福祉政策は、コミューンと呼ばれる地方自治体単位に行われている。スウェーデンの高齢者福祉は世界的に見て、平均的にとても高いレベルにあると思われるが、それでも国内ではコミューンにより、様々な違いが存在することがしばしば議論を集めている。今回のこのコンペティションは、その違いを明らかにし、それぞれのコミューン同士で、学びあうことができるような機会になるよう行われた。
 

最終選考コミューン

全国290のコミューンのうち、最終選考に残ったコミューンは、18のコミューンだった。以下は最終選考に残ったコミューンの場所が記されたスウェーデンの地図だ。地図からもわかるように、スウェーデンの全国、北から南まで様々なエリアのコミューンが最終選考に残ったことがわかる。
 
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2009年の最終選考に残った18のコミューン
 
以下は、18の最終選考のコミューンの人口及び高齢者の人口、割合の表である。
 
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上表からわかるように、候補となったコミューンの人口規模は実に様々だ。例えば人口14万人のLinkoping(リンショーピン)市は、自動車メーカー「サーブ」の本社があるスウェーデンでも比較的大都市だし、人口7千人ほどのNordmaling(ノードマーリング)市は、北エリアの中でも最も小さなコミューンの一つだ。しかし、割合的に見ると65歳以上の高齢者がそれぞれのコミューンに占める率は、16%から23%ほどと、それほど大きな差はないと言える。
 

第1位、GOTENE(ヨーテネ)市 

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スウェーデンにはコミューンごとにマークがある。これはヨーテネ市のマーク。
 
さて、このコンペティションで第1位に輝いたコミューンは、GOTENE(ヨーテネ)市だった。ヨーテネ市はスウェーデンの中西部に位置する、人口約1万3千人ほどの小規模のコミューンだ。このコミューンはスウェーデン最大の湖、Vanern(ベーネルン)湖に接しており、最も近い大都市はLinkoping(リンショーピン)市である。人口のうち65歳以上の高齢者は約2500人で市の全人口の19.3%で、これは国の平均値よりやや高めだ。さらに80歳以上の高齢者は約700人で5.4%、これは国の平均値とほぼ同等である。
 
このコミューン内で、80歳以上の自宅介護サービスを受ける高齢者は20%で、これは全国の平均値(22%)よりもやや低めだ。しかし、80歳以上で特別住居に住んでいるのは18%で、こちらは平均値(15%)よりも高くなっている。また、コミューンが80歳以上の高齢者に投資する額を見てみると、自宅介護サービスを受ける高齢者への投資額は一人当たり1年間で約23万クローナ(=約300万円)で、これは全国平均23.6万クローナ(=約307万円)とほぼ同等だ。特別住居に住む高齢者への投資額は1年間で約44.5万クローナ(=約578万円)で、こちらは全国平均の54.9万クローナ(=714万円)よりもだいぶ低くなっている。
 
以下は、最終候補コミューンごとの「介護サービスを受ける人」及び「特別住宅に住む人」に対する年間投資額およびその投資を受ける人口の割合の詳細データだ。
 
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また、この他、このヨーテネ市が1位に選ばれた理由として以下のことがあげられている。
 
●高齢者の住居問題はコミューン政治において常に高い重要度を締めており、またコミューン年金者組合(KPR)は、コミューン内での高齢者福祉の計画がある際には、必ず計画の関連グループに含まれるようになっている。
●新しい高齢者福祉計画の受け入れに前向きである。またKPRが受け入れ検討につねに積極的に関わっている。
●いくつものよい高齢者プロジェクトがある。例えば、「携帯チーム」「福祉の中の文化」「友情介護(Vantjanst)」「近親者サポート」「高齢者の日」「平日映画会」などだ。また、こういったプロジェクトに対するコミューンの経済的なサポートも積極的だ。
●自宅介護サービスがうまく機能している。
●自宅ヘルプサービス(Fixartjanst)が充実している。自宅ヘルプサービスとは、例えば、電池の交換、ランプの交換、カーテンの取り付け、庭の家具の移動、屋根裏や地下から必要なものを取り出すなど、日常的な小さなサポートを行うサービスだ。
●80歳以上の人すべてが自宅介護サービスを受ける権利がある。
●KPRが効率的かつ効果的に機能している。
 
カフェ・オペラで行われた授賞式で、ヨーテネ市の代表として参加したボー・ベリステン氏とグレーテ・ベルティルソン氏は高齢者福祉大臣のマリア・ラーション氏から花束の贈呈を受け、受賞の感謝と、2010年の1年間もさらに引き続き努力を続けるというスピーチを行った。
 
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向かって右からヨーテネ市のベリステン氏、ベルティルソン氏、高齢者福祉大臣のマリア・ラーション氏。
 

まとめ

コミューン単位で行われる高齢者福祉は、スウェーデン国内でしばしば議論のもとになっている。地域に密着し、その地域ごとの細やかな政策作りや対応ができるメリットの反面、コミューンごとの人口や税収額により、可能なサービスに差が出てしまうというデメリットもある。全国年金連合会の主導によるこのようなコンペティションにより、それぞれのコミューンの実態が明らかになることは、各コミューンごとのサービスの向上という意味では非常に有意義なことだと思われる。

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