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ヨーロッパ高齢者事情研究のため、2007年2月ストックホルムシニアライフ研究所を開設しました。
現地から最新の高齢者事情をレポートします。

シニアに人気の新アクティビティ

松下泰志(Taishi Matsushita: 2012/1-), セスレ真美(Mami Sessle: 2011/11-2011/12),
ローベリ亜佐子(Asako Raberg: 2011/1-2011/10), ダールマン容子(Yoko Dahlman: 2007/2-2010/12)   

 スポーツ好きな高齢者達

スウェーデンの高齢者は元気だ。そして何より散歩が好きだ。それは、スウェーデンの気候が関係しているのかもしれない。スウェーデンの冬は長くて暗い。8月まで30℃ぐらいの暑さでも、9月になったとたんに気温は急激に下がり、時には10℃以上も下がる。そしてだんだん日照時間が短くなり、12月のピーク時には、朝8時半頃やっと明るくなり、午後3時には真っ暗になる(ストックホルムの場合)。昼間もどんよりとした天気の日が多い。そんな訳で、昼間少しでも太陽が顔を出すと、「さあ、散歩に出かけよう!」という気分になるのだろう。
 
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スウェーデンでは、高齢者のためのアクティビティが、かなり充実している。スキー、テニス、ゴルフ、ボーリング、合気道などの各スポーツクラブによって、高齢者のための試合が開催されたりする。その他、スポーツ以外のチェスやポーカーなどのアクティビティも人気だ。また、このようなアクティビティに参加することが、生き甲斐となっている高齢者はたくさんいる。
 
アルツハイマーの妻を持つルーネさんは、妻の世話、家事、庭仕事、家の修理と何でも一人でこなしている。彼にとって、毎週木曜日のテニスの日は、とても大切なリフレッシュの時間だそうだ。「外に出て友人達と球を思いっきり打ち合うことは、今の私にとって絶対に欠かせない大切な時間です。」とルーネさんは笑って言った。
 
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テニスの試合になると真剣な最年長プレーヤーのインゲマル オーケルマンさん(88)
 

アウトドアジム − 新しい出会いの場所

健康な高齢者ばかりではなく、例えば車椅子を利用している高齢者達も、もっと外に出て運動するべきだと考えた、セシリア・イェンスフェルト株式会社は、2010年、すべての高齢者が楽しめるアウトドアジムを提案した。現在、このようなアウトドアジムは、スウェーデンに全部で20カ所、ストックホルムに4カ所設置されている。
 
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このジムのコンセプトは、子供からお年寄りまで誰もが、遊びながら楽しくトレーニングできるということだ。ほとんどのトレーニング器具が、2人もしくは数人で向かい合ってトレーニングできる仕組みになっているため、友人達と話しながら簡単にトレーニングができるわけだ。一人暮らしの孤独な高齢者も、色々な人と話して仲良くなれる機会が持てる。また多くの高齢者が、トレーニング器具を使って、それぞれの目標にあった体力トレーニングをしたいと思っているが、普通のスポーツクラブでは気後れしてしまう人も少なくない。多くのトレーニング器具は、使い方が難しいものや、高齢者には不向きなものが多いからだ。また、いちいち服を着替えなければならないのも、高齢者にとっては面倒なことのひとつだ。
 
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人間は年を取るともちろん体力が低下する。しかし、90歳と20歳の体力トレーニングを行ったところ、彼らの筋力コンディションは、ほぼ同じという結果が出た。90歳以上の高齢者ですら、筋力トレーニングによって、筋力と筋肉の質が上がるという良い結果だった。高齢者は、若者と同様に高いトレーニングレベルを持っている。ただ、トレーニングによる結果が表れるのが遅いだけなのだ。
 

モデルは中国

2008年のオリンピックが北京で開かれることが決まった時、中国政府は、国民のためのトレーニングアクティビティを考え直すことを提案した。政府が行ったのは、オリンピックチケットの収入の一部で、国民全員が利用できる無料のトレーニング環境を作ることだった。これがその後の中国で、アウトドア向けトレーニング器具が急速に発展していった背景となる。
 
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トレーニング器具は現在、公園、通り、広場など、様々な場所に設置されていて、みんなが楽しめるようにと鮮やかな色で統一されている。だれも特別なトレーニングウェアを着ている人はいない。ただ買い物帰りの主婦達が、カフェでお茶する代わりにみんなでふらりと寄り道したという感じだ。この素晴らしいアイデアを自国にも取り入れたいと考えたスウェーデンは、モデルとなった中国から、トレーニング器具を輸入している。
 
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アウトドアジムを体験した高齢者は…

このアウトドアジムが、スウェーデンの高齢者に受け入れられるのか、国が経営する高齢者用特別住宅の住民20人に、実際試してもらった。そこに住む人達の多くは車椅子で、立ったり座ったりする時には助けが必要な人達だ。腕で大きなハンドルを回すトレーニング器具「車輪」は、全部で4つのハンドルが付いているので、4人一緒にトレーニングできる。しかもそのうちの2つは、車椅子の人も使えるように、高さが低めになっている。また、体をどう動かすか、体のどの部分を鍛えることができるのかなど、各トレーニング器具の使用方法も簡単に理解できるように、写真や絵などで見えやすい場所に示されている。
 
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アウトドアジムを楽しむ高齢者達
 
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高齢者に分かりやすい表示
 
この日は、とにかくたくさんの高齢者が楽しんだようだ。助けが必要な車椅子の高齢者達も、使い方が難しそうと座って見ていた人達も、試してみると簡単で、みんなが笑い、上手にできると拍手が起こるといった和やかな雰囲気だった。
 

まとめ

高齢者だから筋肉トレーニングは必要ないということはない。むしろ高齢者だからこそ必要なのかもしれない。トレーニングを行うことで、雪の多いスウェーデンでは、転倒事故をかなり防げるという。アウトドアジムは、まだストックホルムに4カ所しかない。これからもどんどん増えていくであろうこのアウトドアジムの最も重要な点は、高齢者特別住宅などの高齢者が多い地域に設置すること。そして夏の暑い日でも人々が集まれるよう、木陰ができる場所を作ることなど、高齢者が快適に楽しくトレーニングできる場所作りをすることだ。このアウトドアジムが、中国のようにたくさんの場所にできれば、カフェに代わって、人々の新たな出会いの場所になるではないだろうか。

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