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ヨーロッパ高齢者事情研究のため、2007年2月ストックホルムシニアライフ研究所を開設しました。
現地から最新の高齢者事情をレポートします。

国境を越えるシニア世代

松下泰志(Taishi Matsushita: 2012/1-), セスレ真美(Mami Sessle: 2011/11-2011/12),
ローベリ亜佐子(Asako Raberg: 2011/1-2011/10), ダールマン容子(Yoko Dahlman: 2007/2-2010/12)   

65歳から海外で暮らす

老後をどう過ごすか。ゆっくり趣味に興じたい、何か新しいことに挑戦したいなど、今までやりたくてもできなかったことが思い浮かぶのではないだろうか。その一つとして、海外でのんびり暮らしたいという人が、近年増えてきている。
 
特に、海外旅行慣れした1940年代生まれの人たちが、シニア世代に突入したことで、シニアの海外移住の人数は毎年増え続けている。スウェーデンの65歳以上の高齢者で、海外移住を考えている人のほとんどが、暖かい国で暮らしたいと言う。過ごしやすい気候と緩やかな気温は、移住を考えるのに十分過ぎるほど魅力的な要素のようだ。
 
移住したい国で最も人気なのは、フランス、スペイン。そして新たにEU加盟国となったキプロス、そして英語圏のマルタも人気が出てきている。EU加盟国以外の国では、スウェーデンから直行便で行けるタイが一番人気のようだ。
 
人気の海外移住国ベスト10
 
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海外移住のための情報は、 各コンサルタント会社がお世話してくれる。海外移住のスペシャリストであるTax Zero ABは、ホームページに人気の国の税金や法律などの海外移住情報を載せている。また、移住してからの経済プランの相談にものってくれるので心強い。

リアルドリーム - パラダイスを見つけた夫婦

スティーヴ・ニッツボーンさん(73)は、1957年に初めてスペインのマヨルカ島を訪れた時に、スペインの魅力に取り憑かれた。その後も何度もスペインを訪れ、現在のノルウェー人の妻イングリッドさんとも出会った。結婚後、スペインに移住した友人からアドバイスを受け、1996年10月5日ニッツボーン夫婦は、スペインに移住した。
 
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  スペインでパラダイスのような生活を楽しむニッツボーン夫婦

「私達夫婦はスペインに移住したことを、一度も後悔したことはありません。毎年10月5日の移住記念日を2人でお祝いしています。」夫婦は、スペインでは典型的な賃貸の小さなタウンハウスに住んでいる。「私達はこの家がとても気に入っています。静かで心地よくて、プライベートのプール付き。それに必要なものはほとんどすべて、家の近くで間に合わせることができるので、とても便利なんです。」とイングリッドさんは、庭にある大きなバナナの木を誇らしげに見ながら語ってくれた。

夫婦は母国よりもスペインでの生活の方が、充実した毎日を送っていると言う。2人はスペイン語を全く話せないが、スウェーデン語、ノルウェー語、英語の3カ国語で十分やっていけているようだ。 片言でも一生懸命話そうという気があれば、スペインの人々はとてもおおらかに受け入れてくれるからだ。行動派の2人には、すでにたくさんの友人がいる。 

スペインは、スウェーデンより約30%物価が安い。 ニッツボーン夫妻は、毎月家賃を4000クローナ(約48000円)支払っている。彼らの家は2LDKの間取りに、テラス、庭、プールが付いている。「もしスウェーデンに住んでいたら、4000クローナで一体何ができるでしょう?」とスティーヴンさんは言う。

日常生活の面でも、スウェーデンと比べるとかなり経済的だ。食料品は、チキン、ビーフ、野菜が特に新鮮でリーズナブルだ。そしてビールやワイン、スプリットなどのアルコール類は、かなり低価格で購入できる。

経済的な面だけでなく、スウェーデンの長い冬を過ごすのは高齢者にとって決して楽ではない。凍結した道を歩く危険性を考えると、出歩くことが億劫になりがちだ。ニッツボーン夫妻は、高齢者はもっと外に出て楽しむべきだと考えている。暖かい国に移住すれば、もっと多くの人達が活動的に、自分のやりたいことをできるのではないかと語る。

海外移住の理由

海外移住を決心する時の理由とは何か。移住理由のベスト3は、次のような結果だった。
 

1位 暖かい気候
2位 税金が低い
3位 医療ケアの質

- 気候

移住理由第1位の気候について、スペインとスウェーデンで比べてみよう。 以下の表は、スペインのマラガとスウェーデンの首都ストックホルム(スウェーデン東部)、ヨーテボリ(スウェーデン西部)、マルメ(スウェーデン南部)の年間平均気温を比較したものだ。マラガの年間平均気温は、スウェーデンの春と夏の気温に近く、年間を通して15℃を下らない気温は、スウェーデン人にとって理想な気候なのだろう。

 

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- 税金

本来、海外移住した場合、税金は母国と移住国の両方に払わなければならない。しかし、ヨーロッパのEU加盟国の間では、特別な決まりによりその必要はない。

フランスは、海外移住国の人気第一位だ。その理由は、移住の理由第二位の「税金が低い」ことだ。例えば、スウェーデンの所得税は、30〜55%とかなり高いのに対し、フランスは14〜41%。所得税だけでなく、消費税、財産税、その他あらゆる税が低く、スウェーデンで暮らしている年金受給者が、フランスに移住した場合、年間で約100000クローナ(約120万円)節約できると言われている。

さらにポルトガルは、海外からの(EU加盟国のみ)移住者は、10年間税金を支払う必要はないと発表した。当初、この報告を聞いたコンサルタント会社や年金受給者たちは、報告書の翻訳が間違えているのではないかと思ったと語る。

海外移住のスペシャリストであるTax Zero ABの社長、ヨーラン・アンダション氏は言う。「フランスに移住した場合、税金はスウェーデンで支払う約3分の1、スペインは、約3分の2で済みます。そして、ポルトガルの10年無税という新しい企画によって、これからはポルトガルへの移住に人気が集まるでしょう。」

 

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ヨーラン・アンダション氏

- 医療ケア

EU加盟国への移住の場合、ヨーロッパ医療保険カードを持っていれば、全ての医療ケア(救急医療、リハビリテーションケア、歯の治療など)をカバーしてくれる。このシステムは、子供から大人まですべてのスウェーデン国民(永住ビザを取得した移民も含む)に適用される。このカードを持っていれば、移住国から他の国へ旅行する時の医療保険にもなるので、母国を訪れたい時などとても便利だ。

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ヨーロッパの医療保険カード

各国の医療ケアのレベルを調べるため、健康消費者団体パワーハウスは、年間を通して色々な面から医療ケアに対する調査を行っている。調査内容は、消費者(患者)に対する対応、待ち時間、医療ケアの効率度などのすべての面から検討され、各国の医療ケアレベルの結果が打ち出される。結果ランキングは、「ユーロ健康消費者」のインデックス、ヨーロッパ各国の医療ケアの欄でチェックすることができる。
フランスの社会保険システム(Sécurité sociale) は、とてもハイクオリティな医療ケアを受けることができると言われている。 一番最近の「ユーロ健康消費者」の調査では、2009年に出版されたもので、フランスは7位(33カ国中)にランキングされている。

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フランスの医療ケアカード 「Carte Vitale」

まとめ

世界的に高福祉として知られているスウェーデンであるが、高齢者にかかる税金の負担や医療ケアに対する不安から、海外に移住することを決心する人たちがいるということは否めない。しかし、EU加盟国同士が協力し合い、少しずつ国と国の国境がなくなりつつあるのも事実だ。母国を離れての海外移住は、高齢者にとって楽しいが、簡単なことではない。今後、EU加盟国は、ヨーロッパを一つの大きな国と考え、人々がヨーロッパ各国を今よりももっと、自由に楽しめるように改善していくことが必要なのではないだろうか。

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