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ヨーロッパ高齢者事情研究のため、2007年2月ストックホルムシニアライフ研究所を開設しました。
現地から最新の高齢者事情をレポートします。

高齢者にやさしい街づくり

松下泰志(Taishi Matsushita: 2012/1-), セスレ真美(Mami Sessle: 2011/11-2011/12),
ローベリ亜佐子(Asako Raberg: 2011/1-2011/10), ダールマン容子(Yoko Dahlman: 2007/2-2010/12)   

 ストックホルムはやさしい街?

もっと広くて安全な歩道を、もっと街灯を、もっと清潔な公衆トイレを。スウェーデン年金連合会(SPF)のストックホルム地域担当が、街の公共施設について調査したところ、スウェーデンの首都ストックホルムを高齢者にとって、より住みやすい街にするために改善すべき点がいくつか挙げられた。

「人々が心配せずに外を歩くことができる環境作りはとても大切なことです。」この公共施設調査のプロジェクトにも関わり、カロリンスカ研究機関の神経生物学、健康科学、社会科学の教授でもあるラーシュ・アンダション(Lars Andersson)氏は言う。
 
「ストックホルムは、高齢者にやさしい街だと思いますか?」という質問に対して、同氏は「十分ではないですね。”非常に良い”ことが望ましいわけですが、この”非常に良い”のは頂点ではなく、”非常に良い”レベルをさらに上げていくことは十分可能なのです。」
 
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ラーシュ・アンダション氏
 

街に対する人々の声

- 公衆トイレ - 
ストックホルムのよりよい街づくりに関するアンケートで、最も不満が多かったのが公衆トイレ。74%の人が、屋内の公衆トイレも屋外と同様によくないと答えている。不満の理由としては、汚い、メンテナンスがいき届いていない、入りづらいなどの意見が多かった。
 
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お金を払って一人ずつ入る男女共用トイレ
 
デパートやアーケードの中にあるトイレは比較的きれいで、授乳室が設けられているところもある。トイレの入り口は駅の改札口のような仕組みで、そこでお金を払わなければならない。入り口の横には受付が設置されていて、そこで両替することもできる。いくら払うかは場所によって異なるが、5kr(65円)が平均相場だ。しかし、ここ数年で5kr(65円)から10kr(130円)に引き上げられた公衆トイレが増えている。
 
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トイレの入り口に設置されている両替ができる受付
 
スウェーデン年金連合会のエリック・二ルソン(Erik Nilsson)氏は、清潔なトイレはレストランやホテルにもあると指摘。「ホテルのトイレを借りるために、そこのホテルの滞在者である振りをする人が多いのですが、そんな必要は全くないと思います。」レストランは、トイレのみの利用者を避けるため、トイレの前に「レストランのゲスト以外の方は5kr(65円)」という注意書きが表示されているところも少なくない。その場合はドアに鍵がかかっているため、カウンターまで行って料金を支払い、鍵を借りることができる。
 
- 歩道 - 
さらにアンケートに答えた人たちの64%がストックホルムの街の歩道はあまり良くないと答えている。不満の理由は、歩道の幅が狭い、手入れが行き届いていない、障壁や障害物が多すぎる、 歩道と歩道橋の段差がありすぎる、歩道は歩行者のために確保されるスペースであるべきだ、などの意見が多かった。
 
ストックホルムのよりよい街づくりに関するアンケートの結果、公共施設に関する不満だけでなく、市民へのケア不足に対する不満の声も多かった。
 
1.公衆トイレ 74%
2.歩道 64%
3.屋外の安全性 62%
4.不透明なメディア 60%
5.アクセスの悪さ 58%
6.仕事環境のサポート不足 54%
7.ハンディキャップ用の住居不足 52%
8.横断歩道 51%
 

街の改善活動

WHO (World Health Organisation) によるプロジェクトAge-friendly cities(高齢者にやさしい街)は2005年に始まった。このプロジェクトを始めるにあたって、ラーシュ・アンダション氏はスウェーデン年金連合会のストックホルム地域担当にコンタクトを取り、経済課のエリック・二ルソン氏と連合会会長のシャスティン・ハルグレン(Kerstin Hallgren)氏の協力を得ることができた。
 
ラーシュ・アンダション氏は言う。「例えば高齢者が街に出かける時に、公園にちゃんと街灯があるかどうか…これは高齢者にとっては重要なことです。老人福祉センターで高齢者の方々から受ける質問は、ほとんどが家の外の環境についてなのです。」
 
このプロジェクトの結果は2007年にEUを通して発表され、各ヨーロッパの国の年金受給者協会で、どの街が高齢者にとって過ごしやすい街なのかを判断するためのガイドブックとして使われている。
 

地方自治体のコンペティション

毎年スウェーデン年金連合会(SPF)によって行われる「高齢者にやさしい街コンペティション」で、2010年にノミネートされたのは、ナッカ(Nacka)とソーデルショーピン(Söderköping)の2つのコミューン(地方自治体)という異例の結果となった。その理由として、ナッカは人口9万人の大きなコミューンであるのに対し、ソーデルショーピンは人口1万4千人の小さなコミュ−ン。この2つのコミューンを、対象比較して審査するのは不可能だと判断された結果だ。
 
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2011年の「高齢者にやさしい街コンペティション」ではどこのコミューンが優勝するのかすでに話題となっており、審査結果は今年の12月、授賞式は2012年の1月に予定されている。今年のコンペティションは以下の審査基準で行われる。
 
- ソーシャルコミュニティ(人々が集まれる場所、奉仕活動、文化)
- 有意義な雇用
- スポーツ活動(ジム、スポーツサークル)
- 健康に良いおいしい食品
- より良い環境と利用のしやすさ(ローカルサービス、安全な道と自転車専用道路、密接なコミュニケーション、近隣緑地計画)
- 参加と効果的活動(コミューン、高齢者、ボランティア組織、企業への協力グループ)- 年金アドバイス
 

まとめ

高齢者の孤独死が多い中、スウェーデンは国だけではなく、コミューンが責任をもって街の改善政策を行う。それは国の負担を減らすだけでなく、地元の人々の声に耳を傾けるのは地元に住んでいる人たちということから、もっと身近でリアルな問題を改善していくことができる。WHOの「Age-friendly cities」や「高齢者にやさしい街コンペティション」などによって、それぞれの街の良さを世界の人々に広めることができるこういった企画は、これからもコミューン単位での高齢者にやさしい街づくりの発展に、より良い影響を与えていくのではないだろうか。

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