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ヨーロッパ高齢者事情研究のため、2007年2月ストックホルムシニアライフ研究所を開設しました。
現地から最新の高齢者事情をレポートします。

交通機関の高齢者サポート

松下泰志(Taishi Matsushita: 2012/1-), セスレ真美(Mami Sessle: 2011/11-2011/12),
ローベリ亜佐子(Asako Raberg: 2011/1-2011/10), ダールマン容子(Yoko Dahlman: 2007/2-2010/12)   

トランスポテーションサービス

スウェーデンでは高齢者のためのさまざまな交通機関サービスがある。例えば電車やバスは、65歳以上の人たちは割引価格で乗ることができる。

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数あるサービスの一つとして、トランスポテーションサービス(färdtjänst)というのがある。このサービスは、病気や怪我または運転適性検査の結果、運転免許証を返還することになり、車の運転ができない人、さらに交通機関を利用するにも一人では移動が困難な人のためにできたサービスだ。
 
トランスポテーションサービスに使用されるのは、一般のタクシーまたは特別車とよばれている送迎用の車がある。特別車が使用される場合は事前に予約が必要なため、何名かの利用者と相乗りになることが多い。
 
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料金は、30km圏内は70kr(約900円)、それ以上の場合は30kmごとに70kr加算されていくが、限度額が690kr(約8800円)、年金受給者は420kr(約5400円)なので、それ以上の移動の場合、料金が加算されることはない。これは毎月の限度額なので、月に何回利用しても690kr(または420kr)以上支払う必要はない。しかし利用限度回数が決まっており、年間で118回までとなっているが、毎月約10回は利用できることになる。
 
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トランスポテーションサービスカード
 
近場の移動の場合は、近郊巡回バスを利用することもできる。このバスは小さめで、乗降時には車椅子利用者が降りやすいように、ステップの高さが歩道と平行になるように工夫されている。このバスの巡回エリアは、高齢者が多い街を中心に集中している。近郊巡回バスは、サービスバス、サービス線、フレックス線ともよばれ、多くの高齢者に利用されている。
 
また、トランスポテーションサービスカードで公共交通機関を使用することも可能で、カードを提示さえすれば無料で利用できる。また利用者介護のための付添人も無料となる。
 

コミューンを支えるSL

このトランスポテーションサービスは、各コミューン(地方自治体)によって行われているため、住んでいる地域によって多少サービスが異なる場合もある。ストックホルムでは、SL(Stockholm Lokaltrafik)が中心となって、コミューンを支えている。
 
SLとは1916年創業以来、ストックホルム地域の公共交通機関のすべてを運営している企業で、地下鉄からローカル列車、トラム、バス、夏は巡回ボートまで幅広い交通機関サービスを提供している。
 
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SLの企業マーク
 
ヨーロッパでは公共交通機関サービスの発達が遅れているため、日本ではあたりまえと思われているサービスを受けることは難しい。しかし、SLはトランスポテーションサービスをより快適に、よりスムーズなものにするために日々改善策を行っている。
 
例えば公共バスの乗降のためのステップは、83%のバスが高齢者や車椅子の利用者のために歩道と同じ高さになるように改良された。また、地下鉄もホームと電車の段差をなくし、幅も狭める工夫が進められている。
 
バスの停留所自動お知らせサービスや地下鉄の列車到着時間自動掲示板も、スウェーデンではごく新しいサービスだ。
 

問題解決

トランスポテーションサービスの予約は、出かける予定日の28日前から30分前まで可能で、タクシーを予約する場合は、1時間に3回、例えば15分、30分、45分と出発時間が決められている場合が多い。
 
今年の4月、このサービス予約を巡りスウェーデンの南部ルンドで、タクシー会社020と利用者との間にトラブルが起きた。 人々の不満や苦情は主に、電話してもタクシーが時間通りに来ないことだった。 この問題はハンディキャップ全国協会(Delaktighet, Handlingskraft, Rörelsefrihet)によって明るみに出た。
 
ヨアキム・ヴァシリアディス氏は教師をしているが、タクシーが来ないため30人の生徒が待つ中、遅刻したことが何度もあるという。電話をかけて確認しても、タクシー020の予約センターでは「そちらに向かっているのでもうすぐ着くはずです」の一点張りだった。
 
タクシー020の予約センターで働いていたことがあるカミラ・ポールソン氏は、この問題についてこう語った。「社員の教育不足と教育の要求不足が問題だと思います。運転手は土地カンが全くないことが多く、予定通りに目的地に着くことが不可能なわけです。」
 
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鮮やかな黄色が目印のタクシー020
 
問題が起こった2ヶ月後の6月13日の新聞で再び掲載された記事によると、タクシー020は雇用と車両数を増やし、さらに社員の教育に力を入れているという。
 
「ルンドのトランスポテーションサービス利用者は、われわれにとって非常に大切なお客様です。ルンドコミューン(自治体)と共に、これからもより良いサービスを目指してがんばっていきたいと考えています。」タクシー020ルンド支社の社長パー・ルンドクイスト氏は言う。
 
実際、5月19日から25日に行った顧客調査では、81%の人が予約センターの対応が良くなったと答え、83%の人がタクシーの到着時間に満足しているという結果が出た。
 

まとめ

高齢者の生活をより快適にするため、コミューン(地方自治体)と一般企業が協力してサービスを提供する姿勢はすばらしい。しかしルンドで起こった問題のように、2つの組織が同じモチベーションレベルを保たなければ、サービスの質は下がってしまう。人々の苦情に対して、タクシー020の対応は非常に早く、利用者の信頼を取り戻すことができた。高齢者は自由に体が動かないなど、生活範囲が狭められてしまうことが多いため、その不自由さの不安を軽減するためにも、今後もますます便利なサービスが生まれることを期待したい。

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