HOME  >  スウェーデンシニアレポート  >  最近の食に関する研究結果と季節の「食」

ヨーロッパ高齢者事情研究のため、2007年2月ストックホルムシニアライフ研究所を開設しました。
現地から最新の高齢者事情をレポートします。

最近の食に関する研究結果と季節の「食」

松下泰志(Taishi Matsushita: 2012/1-), セスレ真美(Mami Sessle: 2011/11-2011/12),
ローベリ亜佐子(Asako Raberg: 2011/1-2011/10), ダールマン容子(Yoko Dahlman: 2007/2-2010/12)   

今回のレポートでは食に関する話題を二つお届けします。

地中海料理の新たな効能

スウェーデンでは毎年約2万人が認知症になっていると言われています。また、この他に認知症の徴候が見られる人も多くいます。ウメオ大学(スウェーデン)のイングェ・グスタフソン教授らの最近の調査・研究結果によるとスウェーデンの85歳以上のお年寄りの痴呆症の人数がここ数年で急激に増えているとのことです。
 
そのこともあり認知症に関する関心は非常に高く、認知症の予防に関する研究などが盛んです。様々な認知症の予防方法が提案されていますが、食に関して言えば地中海料理に認知症を予防する効果があることが知られています。また、一般的に地中海料理には野菜、抗炎症効果がある健康によい脂質、オメガ3脂肪酸が多く含まれており、中性脂肪量を減少させ、心臓血管疾患に対しても効果があると言われています。
 
ここ数年で、スウェーデンのスーパーに並ぶ食品に「オメガ3脂肪酸」の表示があるのを頻繁に見かけるようになりました。この脂肪酸の効果が注目されている表れといえるでしょう。また、地中海料理のレシピ本や料理番組も人気です。
 
0223_01.jpg
 
最近の研究でこの地中海料理に新たな効能があることが明らかになりました。ウプサラ大学(スウェーデン)のエリカ・オルソン研究員らの一連の研究により、魚、野菜、豆類、果物、全粒粉などを用いた伝統的な地中海料理が高齢者の記憶力、集中力の低下のリスクを軽減し、脳を健康に保つ効能があること、また、お年寄りの認知能力が低下していくリスクを下げる効能もあることが明らかになり、ストックホルムで開かれた学会で発表されました。
 
ウプサラでは1970年代から560人以上を対象に食習慣調査を実施されました。オルソン研究員らははじめに70歳になった被験者の食習慣、生活習慣に関する調査を行い、被験者を
 
1)スウェーデン国立栄養研究所が推奨する脂質の少ない食べ物を食べたグループ、
2)地中海料理を食べたグループ、
3)炭水化物が少なく多くのたんぱく質を含む食品を食べたグループ
の3つのグループに分けました。
 
そして12年後、被験者が82歳になった時点で調査した結果、48人がアルツハイマー症候群になり、79人に認知症の兆候が見られる事がわかりました。その他に105人が記憶力、学習能力などの低下の症状がみられたとのことです。
 
これらの結果を、被験者の教育レベル、運動量、一人暮らしか否か、喫煙の有無などの要素を考慮し総合的に分析した結果、地中海料理を食べた被験者は認知能力が低下するリスクが70%低いということ結果が得られました。
 
几帳面に地中海料理を食べることを守った被験者の方が病気を予防することができたことも明らかになりました。栄養士でもあるオルソン研究員によると、これまでにも知られていた認知症を予防する効果があることも確認できたとのことです。
 

季節のお菓子「セムラ」

2つ目の「食」はこの季節ならではのものです。最も寒いこの季節、スウェーデン人にとって楽しみがひとつあります。それは、カフェなどで「セムラ(Semla)」という伝統的なお菓子を食べることです。
 
0223_02.jpg
セムラ 
 
セムラは「肥沃な火曜日の菓子パン(Fettisdagsbulle)」とも呼ばれるお菓子で、とても甘いアーモンドペーストと生クリームが中に詰めてある小さい丸い菓子パンのことです。パンと生クリームは甘くないので、全体としてはほどよい甘さ。コーヒーによく合いますが、スウェーデン北部では温めた牛乳に浸して食べられます。セムラはお店によって味や形が様々。毎年新聞などで食べ比べの記事や、ランキングが掲載されるほど愛されている菓子パンです。
 
セムラは本来、日本語では「肥沃な火曜日」あるいは「懺悔の火曜日」などと呼ばれる日(Fettisdag)から復活祭(Påsk)の日までの期間に食べるものです。「肥沃な火曜日」は移動祝祭日ですがだいたい2月になります。ちなみに今年(2012年)は2月21日です。この日から、同じく移動祝祭日である復活祭の日までの期間限定で食べることができるお菓子です。なお、スウェーデンの復活祭については以前のレポート(2011年4月27日付レポート)に詳しく書かれていますので、そちらをご覧いただければと思います。
 
セムラが売り出される時期が年々早くなり、最近では1月でもお店で見られるようになりました。セムラ好きの人にとっては嬉しいものの、そのような商業主義的な流れを苦々しい思いで見ている伝統を重んじるお年寄りもいるようです。先日もあるケーキ屋さんで、お年寄りの方が、まだ1月なのにどうしてセムラを売っているのかとお店の人に聞いていました。お店の人曰く、「これにはサフランが入っているのでセムラではない」とのこと。どうみてもセムラだったのですが・・・。
 
お年寄りのお友達どうしがカフェに集まり、セムラを食べながら話に華をさかせています。一人暮らしのお年寄りが多いスウェーデンでは、こういった交流を通してストレス解消をしています。前述の地中海料理のように科学的なデータはありませんが、セムラを食べながらおしゃべりをし、ストレス解消をすることで認知症予防になっているかもしれませんね。
 

まとめ

今回は最近のスウェーデンの研究結果と季節の話題をお届けしました。食が重要であることは常々言われていますが、今回の研究結果でその重要性を再認識できたかと思います。同様の研究は活発に行われており、今後新たな研究結果が次々とでることが予想されます。シニアレポートではそのような新しい結果を逐次レポートいたしたいと思います。また、季節の話題もあわせてお届けしたいと思います。

ページTOPへ