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ヨーロッパ高齢者事情研究のため、2007年2月ストックホルムシニアライフ研究所を開設しました。
現地から最新の高齢者事情をレポートします。

タクティールマッサージの効果に関する調査・研究結果・事例

松下泰志(Taishi Matsushita: 2012/1-), セスレ真美(Mami Sessle: 2011/11-2011/12),
ローベリ亜佐子(Asako Raberg: 2011/1-2011/10), ダールマン容子(Yoko Dahlman: 2007/2-2010/12)   

今回のレポートではタクティールマッサージの効果に関する調査・研究結果・事例をご報告したいと思います。

タクティールマッサージ

タクティールマッサージ(Taktil Massage あるいはTaktil stimulering)はスウェーデン式のマッサージ法で、日本語では単にタクティール、あるいはタクティール・ケアとも呼ばれています。ソフトなマッサージで筋肉をあまり強く刺激しないのが特徴です。日本でもすでに紹介されていますのでお聞きになったことがある方もいるのではないかと思います。
 
タクティールマッサージの原型となるものは数十年前からありましたが、タクティールマッサージを今日の形にしたのは、お二人のスウェーデン人、シーヴ・アーデビー氏とグニッラ・ビルケスタッド氏の貢献が大きいといえます。
 
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シーヴ・アーデビー氏(左)とグニッラ・ビルケスタッド氏(右)
写真:スウェーデン痴呆症センター/ビルケスタッド氏が創立したマッサージ専門学校のホームページより
 
タクティールマッサージの歴史はまだ浅く、研究が十分に進んでいるとはいえません。そのため、タクティールマッサージの効果が科学的に十分証明されているわけではありませんが、痛みの緩和やリラックスに効果があるとされています。以下にいくつかの事例とともにその効用をご紹介したいと思います。
 

事例1 ?タクティールマッサージは痴呆症の症状を軽減する?

スウェーデンのヘーデモラ市は市としてタクティールマッサージを痴呆症の人に施す取り組みを始めました。痴呆症の老人入居者がいる老人福祉施設で看護師として働いているスージー・ヴェストルンド氏はタクティールマッサージを行うことにより、入居者が落ち着き、薬もあまり飲む必要がなくなったと言っています。ヴェストルンド氏は入居者の不安が軽減され、精神安定剤の使用量も以前に比べ減り、よく眠るようになったとのことです。
 
同じ施設で働くグルブリット・ベックロース氏も同じく、タクティールマッサージの大きな効果に気が付いた一人です。普段、夜にマッサージを施しており、その結果入居者は落ち着いて眠るようになり、夜中に目を覚ます事なく朝まで寝るようになったとのことです。
 

事例2 ?看護現場におけるタクティールマッサージ?

ウメオ大学(スウェーデン)看護学科の研究者のレニタ・リンドグレーン氏は看護現場でのタクティールマッサージの効果を調査しました。特に集中治療が必要な患者を対象に調査を行いました。調査を通してタクティールマッサージを受けた集中治療室の患者は血圧が正常値に下がり、正常な呼吸数になる事がわかりました。その上、ストレスも軽減され、不安や痛みも軽減されましたとのことです。
 
リンドグレーン氏はタクティールマッサージが既存の投薬治療などに取って代わることはないものの、それを補完するものには充分成り得ると考えています。
 
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タクティールマッサージ(写真は本文とは関係ありません)
写真:スウェーデン痴呆症センター
 

事例3 ?痴呆症の方へのタクティールマッサージと音楽?

社会福祉事業などに関する研究を行なっているノールボッテン研究・開発センター(スウェーデン)のエバ・カールソン氏はタクティールマッサージと音楽の痴呆症に対する効果を調査しました。
 
調査では、リラックスしてもらうために手、足、首などにタクティールマッサージを夕食の休憩時、寝るときなどに施されました。また、音楽を気晴らしのために使いました。具体的にはお風呂の時間、散歩の時間、痴呆症による幻覚症状を起こした時(気を取り乱した時)などに使いました。その結果歩く際にバランスを取ることが難しかった人でも、音楽をかけてリズムをとることによって身体能力が改善したとのことです。また、気を取り乱した時、一緒に歌を歌い、歌に集中させると良いこともわかりました。
 
タクティールマッサージと音楽の効果で老人福祉施設内が落ち着いた雰囲気になり、その結果、施設で働いている人の仕事の負担も軽減したとのことです。
 

事例集

最近タクティールマッサージに関する事例、体験談をまとめた本がスウェーデンで出版されました。看護師や助産師、作業療法士により、様々な症状に対してどのような方法でタクティールマッサージを行うのが効果的かが書かれています。また、作業療法士、患者さん両者の体験談が載っています。
 
その本、「タクティールマッサージとソフトマッサージ ?揺りかごから墓場まで?」の編者であるヨンショーピング大学(スウェーデン)・保健学科のマリア・ヘンリクソン氏はタクティールマッサージに詳しい看護師・研究者です。
 
「タクティールマッサージは様々な症状を緩和して痛みを和らげる効果があると思われます」とヘンリクソン氏は言っています。研究の結果、タクティールマッサージには気持ちを落ち着かせる、俗に愛情ホルモンと呼ばれるオキシトシンを分泌し、ストレスホルモンであるコルチゾールが減少させる効果があるとのことです。また、心拍数、血圧、血糖値などを抑え、体調を良くし、認知能力を高める効果があるとのことです。
 
タクティールマッサージは様々な症状、幅広い年齢の人に効果があり、ヘンリクソン氏は「タクティールマッサージを施すことにより、悪阻(つわり)による吐き気も癌による吐き気も軽減され、出産を控えた女性の不安も集中治療室で治療を受けている人の不安や痛みもタクティールマッサージを受けることによって軽減されます。お年寄りも、学生も、心療内科の患者さんも皆さん静かに落ち着く事ができます」と言っています。
 
例えば、心療内科の患者さんはタクティールマッサージを受けることで薬の量を減らすことができました。そして、何事をやるにもアクティブになったとの報告もあります。また、睡眠薬の使用をやめることができた老人福祉施設もあります。
 
タクティールマッサージの効用は科学的にはまだ十分証明されていませんが、このように、タクティールマッサージは様々な症状を緩和し、幅広い年齢の人に効果があることが報告されています。ヘンリクソン氏はタクティールマッサージを過剰評価してはならないものの、事例2でのリンドグレーン氏と同様、タクティールマッサージが通常の治療を補完するものには成り得ると考えています。
 

まとめ

今回のレポートではスウェーデン発祥のマッサージ、タクティールマッサージについて、その効果を事例を通してご紹介いたしました。スウェーデンでは自分から積極的に病気を治すことが求められます。そのため、ときには病院の先生から「どうしたら良くなると思いますか?」「何かしてもらいたいことはありますか?」と質問されることもあります。そんなとき、タクティールマッサージをしてもらうことはひとつの選択肢になるかもしれません。
 
興味がある方は専門家の意見や事例を参考にして、タクティールマッサージを取り入れてみてはいかがでしょうか?

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