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ヨーロッパ高齢者事情研究のため、2007年2月ストックホルムシニアライフ研究所を開設しました。
現地から最新の高齢者事情をレポートします。

高齢者の食生活(2)

松下泰志(Taishi Matsushita: 2012/1-), セスレ真美(Mami Sessle: 2011/11-2011/12),
ローベリ亜佐子(Asako Raberg: 2011/1-2011/10), ダールマン容子(Yoko Dahlman: 2007/2-2010/12)   

今回はシニアの食に関するタイムリーな話題をいくつかご報告したいと思います。

シニア向け料理のコンテスト

毎年6月上旬にストックホルムで開かれる食に関するイベント、Smaka på Stockholm!(ストックホルムを味わおう!)が今年も開催されました。ストックホルム中心部にある公園、クングストレードゴーデンで開かれている恒例のイベントです。このイベントの一環として、シニアのための料理に関するコンテストも行われました。
 
シニアのための食事を広く知ってもらい、しばしば批判の対象となる宅配の料理、訪問介護による料理、老人福祉施設での食事の質の向上を目指して行われているのがこのコンテスト。このコンテストを通して、料理に関するアイディア・インスピレーションを得てもらい、シニアの日々の食生活をよりよいものにすることを目指して、スウェーデン国内の有名なシェフが参加して行われています。
 
去年のコンテストでは2011.10.27付けのレポートでもご報告しましたように、ノーベル賞晩餐会のメニューを提供した経歴もあるステファン・エリクソン氏が優勝しましたが、今年は2008年のイヤー・オブ・ザ・シェフに選ばれたトム・フェーステット氏が優勝しました。フェーステット氏はエコ野菜を使った、洗練された料理を得意とすることで知られています。
 
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フェーステット氏(Smaka på Stockholm!ホームページより)
 
受賞メニューは「スパイシー豚ソーセージ、サラダとマスタード、レモンヨーグルトソース添え」です。
 
審査員による評価と受賞理由は「味わい豊かで、斬新な一品。美しい食材の色合い・バランスで、クラシックさを基調にしつつモダンさをも実現している。待ち望んでいた一品。」
 
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受賞メニュー:スパイシー豚ソーセージ、サラダとマスタード、レモンヨーグルトソース添え(Smaka på Stockholm!ホームページより)
 
フェーステット氏は受賞メニューについての次のように解説しています。
 
「ソーセージは皆さんに受け入れてもらえる伝統的な食材だと思います。もちろん、シニアの方が普段の生活の中で毎回手作りのソーセージを作るというわけにはいかないと思います。でも、インスピレーションを得てもらいたいと思って、あえてこのレシピを選びました。料理人と本当に良いソーセージをホンモノの材料から作ってくれているメーカーさんとの間で何か出来ればいいんじゃないかなと思って。そしてこの素晴らしい手作り食材を全国のお年寄りの方にお届け出来ればと思っています。添えた野菜は暖かくして食べても良いし、冷たいままでも食べられます。美味しいマスタードとレモンヨーグルトのソースも添えています。何十年も食べたいと思う料理ができたと思っています」
 
来年のコンテストがもう今から楽しみです。
 

ある老人福祉施設での食事

コンテストでのメニューは、ある種、理想的なものということになると思います。実際の介護の現場での食事はどのようなものなのか、ある老人福祉施設で調理を担当している方に福祉施設での食事の状況についてインタビューしてみました。
 
Q1. 利用者の方に満足していただけていまか?
A1. おおむね満足していただいていると思います。たまに、味付けにクレームをだされるお年寄りがいます。アレルギー対応の食事、ベジタリアン料理、嚥下食等細かく対応していますが、すべての方に満足のいく食事作りはなかなか難しいですね。
 
Q2. どういった特色がありますか?
A2. 施設の一部にあるカフェ・食堂ではお年寄りの部屋で提供されるものと全く同じ料理を食べることができます。気分転換にカフェで食事をとりたいお年寄り、知り合いと顔を合わせて食事したいお年寄りなど、レジで名前を言うだけで自由に利用することができます。中には毎日カフェに来られる方もいて、いい社交の場となっているようです。
 
Q3. どのような点を改善すべきだと思いますか?
A3. メニューはお年寄りが好む、スウェーデン家庭料理が中心です。そうすると必然的にバターや生クリームの摂取量がかなり多くなります。伝統的なものだけではなく、もう少し栄養バランスを考慮したメニューを提供できればと思います。また、加工食品(ソーセージ、ミートボールなど)を頻繁に使っている点も改善すべきだと思っています。ただ、限られた予算の中でそういった点を改善するのは厳しいというのが現状です。
 
Q4. なにか工夫している点はありますか?
A4. 毎日、夕食には小さい手作りデザートを出しています。ベリーのスープに生クリームをそえたもの、アップルパイなど簡単なものですが、好評でお年寄りの楽しみになっているようです。もちろん糖尿病の方のためのデザートもあります。
 
インタビューを通して、理想と現実の間で、少しでも良い料理・食事の場を提供しようとする姿を垣間見ることができました。
 

老人福祉施設でお酒の提供が可能に

食事に関して、それぞれの施設がいろいろな制約がある中で、様々な工夫をしていますが、スウェーデンでは老人福祉施設での食事に関する法改正がありました。それによって今月(2012年6月)から老人福祉施設で自由にお酒を提供できるようになりました。これまでは、その都度許可を得る必要がありましたが、今度からはビールやワインなどを自由に提供できるようになりました。
 
施設職員らはこれで入居者の希望に答えやすくなったと歓迎しています。施設職員の人は、「これまではパーティーなど特別な日にお酒を提供してきたけど、入居している人に、今後は家にいるときと同じように、普段からテレビや映画を見ながらお酒を楽しんでもらえるようになるので良かったです」と言っています。また、今回の法改正に関する質問に次のように答えています。
 
Q1.お酒が自由に提供できることになって何か問題が起こると思いますか?
A1. いいえ。全く問題無いと思います。入居されている方、入居者の家族の方とも話をしましたが、特に問題無いと思います。
 
Q2. 急性アルコール中毒などの可能性は?
A2. ないですね。これまで6年間パーティーの際にお酒を出してきましたが、一度もそういったことはありませんでした。
 
Q3. アルコール摂取量の制限については?
A3. 特に設けていません。一般的に考えられている適正量と同じです。
 
Q4. 入居されている方は今回の法改正をどのように受け止めていますか?
A4. 歓迎していると思います。適量のワインは体に良いことも証明されていますし。お酒を飲まない入居者も、他の人が飲むことに関しては問題無いと考えています。
 
職員、入居者共に自由にお酒が飲めるようになったことを歓迎しているようです。今回の法改正は、行政の側でもシニアのための食事に関して少しでも良い環境を作ろうとする姿の現れではないかと思いました。
 

まとめ

今回のレポートでは、シニアの食に関するいくつかの話題を取り上げてみました。シニアのための食事を少しでも改善すべく、様々な取り組みが行われています。今後もこういった活動が続き、シニアのための食事がより良くなることを願ってやみません。

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