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ヨーロッパ高齢者事情研究のため、2007年2月ストックホルムシニアライフ研究所を開設しました。
現地から最新の高齢者事情をレポートします。

自治体の自宅訪問サービスへの取り組み

松下泰志(Taishi Matsushita: 2012/1-), セスレ真美(Mami Sessle: 2011/11-2011/12),
ローベリ亜佐子(Asako Raberg: 2011/1-2011/10), ダールマン容子(Yoko Dahlman: 2007/2-2010/12)   

 これまでも何度かスウェーデンの自宅訪問サービスについてレポートいたしましたが、今回は自治体の自宅訪問サービスに関する動きをレポートしたいと思います。3つの市の取り組みを取り上げます。

サポートチームの結成(ボースタッド市)

ボースタッド市では今年に入り自宅訪問サービスを行うチームが新たに3つ結成されました。2年近く活動しているボースタッド市の自宅訪問サービスチームは看護師、看護師補助、理学療法士、民生委員で構成されています。以前は病院でケアを受ける人が多かったのですが、今では代わりに自分の家でケアを受けるようになってきています。3週間、必要なケア、食事の用意、ヘルプツールの提供、看護師・理学療法士のサポートなどを受けることができます。

チームのメンバーは「デイケアセンターでは職員の人が全部やってくれます。それはそれで良いと思いますが、私たちはそうではなく、介護を受ける人がまた自立して生活できる手助けをします」と言っています。

2010年に腸閉塞や大腿骨骨折の治療を受けて1ヶ月入院していたアンダーションさん(84歳、ボースタッド市在住)も自宅訪問サービスを受けた一人です。アンダーションさんが病院から家に帰ってくると玄関に自宅訪問サービスのチームが待っていました。アンダーションさんは100点満点だと思ったそうです。
 
病院から家に戻ってきた時、アラームシステム、理学療法士によるトレーニングなどサービスをすぐに受けることが出来ました。これが本当のヘルプ・サポートであり、介護サービスの人がやるべきことだとアンダーションさんは感激したそうです。サービスはしっかりしており、日に4?5回来たそうです。「次に彼らが来るまでにソファーで居眠りする暇もなかったよ」とのことです。今ではアンダーションさんはすっかり元気になり、調理から掃除まですべて一人でこなしています。
 
今年、ボースタッド市では簡易高齢者福祉施設の数を減らし、代わりに自宅訪問サービスに予算をあてることにしています。市の民生委員によると、今のところ自宅訪問サービスをキャンセルした人は、200人以上いる利用者の中の5?6人だということで、概ね好評のようです。
Googleマップより
 

自宅訪問サービスに関する規制緩和(ランズクローナ市)

ランズクローナ市では自治体による高齢者向けの洗濯・買い物などの自宅訪問サービスに関する規制緩和が行われます。これまでは民生委員がどれだけのヘルプが必要かその都度自宅を訪問して、確認・判定していましたが、今年の9月1日からは申請用紙に記入するだけでよくなります。
 
提出された書類に基づいて民生委員が判断するようになります。利用時間についても、週7時間まで利用できるよう規制が緩和されました。また、月に7時間までサービスを延長することが可能になります(対象:70歳以上。同じ家に住んでいれば2人で月10時間まで)。
 
市の担当者は、「第一の目的は個々の人の選択肢を増やすことで、利用者が必要なときに必要なサービスを選べることです。2時間の掃除が必要な人もいれば1時間だけでいい人もいますからね」と言っています。
 
ただ、民間の会社が自治体よりも安い値段で同様のサービスを提供している場合もあり、時々、数時間程度のヘルプが必要な人は会社に頼む場合もあるようです。自治体としては、まだ改革の途中といったところでしょうか。
 

75歳まで引き下げ(スンズヴァル市)

75歳から自宅訪問サービス。そしてより多くの選択肢を。スンズヴァル市では自宅訪問サービスをよりよいものにするための決議を行いました。今年の10月1日からこれまで80歳以上の人だけが受けることができた自宅訪問サービスを75歳から受けることが出来るようになります。
 
また、必要なサービスを電話一本で求めることが出来るようになり、手続きが簡素化されます。サービスには植木の水やり、洗濯、ちょっとした用足しなどがあります。それに加え、アラームシステム、社会活動、食事の配達などもサービスに含まれるようになりました。それぞれの家事に1ヶ月あたり8時間までサービスを受けることができます。
 
利用を考えている人も、シンプルになり選択肢が増えたことについて、「とても良いアイディアだと思います。歳をとってくるとだんだん面倒臭くなってきて、どういうことをやってもらいたいかとか、自分の考えを自宅訪問サービスの人に伝えるのが難しくなってきますから」と言っています。また、長年奥さんの介護で自宅訪問サービスを受けてきた人も「必要なヘルプを選べるというのは大事ですね。新しいサービスはうまくまとまっていると思います」と言っています。
 
市の担当者は、この簡素化により、本当にヘルプを必要としている人に人材を集中させることが出来るようになり、自宅訪問サービスをより効率的にできるようになると考えています。「サービスが受けられる年齢を75歳まで引き下げ、ことが重大になる前に、早めにサポートを受けてもらうことによりアクティブな生活を続けてもらえれば、結果的には長く健康でアクティブに生活できることになる。その結果、年をとってもそれほどヘルプを必要としなくなるかもしれない」というのが市のアイディアのようです。
 
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「自宅訪問サービス利用してる?」「いいや、利用するには年取りすぎだよ!」
 

まとめ

今回のレポートでは、自宅訪問サービスに関する自治体の動きに関する話題を取り上げました。これまでにも、スウェーデンでは様々なサービスの民営化が議論されてきました。自宅訪問サービスの民営化の賛否なども議論されてきましたが、ここに来て自治体による自宅訪問サービス利用の促進の動きが出てきたのでご報告しました。
 
今後、自治体と民間の会社がどのようにサービスの差別化を図っていくのか、利用者がどちらを選ぶのか注目したいと思います。

 

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