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ヨーロッパ高齢者事情研究のため、2007年2月ストックホルムシニアライフ研究所を開設しました。
現地から最新の高齢者事情をレポートします。

家族の介護(2)

松下泰志(Taishi Matsushita: 2012/1-), セスレ真美(Mami Sessle: 2011/11-2011/12),
ローベリ亜佐子(Asako Raberg: 2011/1-2011/10), ダールマン容子(Yoko Dahlman: 2007/2-2010/12)   

今回のレポートでは前回に引き続き家族の介護のあり方について取り上げてみたいと思います。前回のレポートで少しお伝えした介護する人をサポートするという視点にたって運営しているペンション型介護施設、介護をする人へのアドバイスなどについてお伝えしたいと思います。
 

ペンション型介護施設

 
前回のレポート「2013.05.31家族の介護(1)」で少しお伝えしたペンション型介護施設について、もう少し詳しくご紹介したいと思います。
 
このペンションの部屋にはいるとスタッフ6人の名前と写真が壁にかかってます。部屋はできるだけ明るくなるように工夫されており、キッチンとリビングの間には大きな食卓があります。
 
ペンションの利用者の一人Bさんの奥さんは認知症です。ご主人は少し離れた所で看護師に付き添われている奥さんを見守っています。奥さんは静かに落ち着いており、とても満足しています。奥さんは同居者にも満足しているそうです。
 
Bさんは次のように語っています。
「妻はここで満足な時間を過ごしています。自分にとってもこういう施設があることはとってもうれしいですね。昔からの友だちや会社勤めしていた時の仲間と会って話をすることもできるし、車で出かけることもできるし。一度12日間ほど妻を預けたことがあるんです。息子とスペインに旅行に行くことができました。素晴らしかった。妻は普段は一回に3、4日ほどここで過ごしています。月に2回ほど。もうすぐ2年になります」
 
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このペンションで働くスタッフは、「環境が突然変わると適応できずうまくいかないことがよくあります。ではどうしたら良いか?私達が介護する人・される人の世界や生活に入っていく必要があります。それが利用者が望んでいることだと思います」と言っています。
 
施設では介護をする人のために意見交換の場をアレンジしています。これは介護を必要としている人のためのグループにもなります。施設を利用している人たちが自分たちの病気や病気が何を意味するのかということを話すことはとても有意義なことだと考えられています。どうすればゲストの人達が自己嫌悪から脱出できるか?病気によって将来がどうなるか?その人が病気であることを家族はどう感じるか?などのテーマ・課題に取り組んでいます。「病気の初期段階で気づけばそういう課題に取り組むことがより簡単になるので、家族ができるだけ早く病気に気づいてほしいと思う」とスタッフは言っています。
 
介護をしている人がそれぞれのケースにおいて専門家によってケアされるということを知っているということは安心につながります。そういうことを知っていれば家族は施設に預けるという決断をしやすくなります。実際、家族を施設に預けるという決断を下すのはとても難しいことです。施設に預ければ介護をしている家族は楽になるはずなのに、人生を共にしてきた人を施設に入れてしまったということを人に話すのが難しいことがよくあります。長年連れ添った配偶者と別れたくないという思いがそうさせるのでしょう。自分の配偶者と別れるということがどういうふうになるのかということに対して、あえてオープンに語ることが重要だそうです。
 
 

アドバイス1

 
次に、介護する人・される人へのアドバイスについて少し述べてみたいと思います。
 
厚生委員のサラさんは家族として期待されているような介護を母親に対してしませんでした。その代わりに希望を聞いて母親の最後の時間を自由にさせてあげました。
 
「母はガンでした。昨年の秋、亡くなりました。彼女は子供にちょっとだけ訪ねてきてほしいと思っていました。他の人には来てほしくないと言っていました。ですので、その希望に沿うようにしました。他の人は『24時間ずっと付き添ってあげなさい』などと言っていましたが、母が望まなかったのでそれはしませんでした」
 
サラさんは事前に何度も母親と話し合いをしていたそうです。病気のこと、死についてなど。そして、いつ人が来ていいかなどについて。そしてその希望通りにしてあげたそうです。オープンに話し合うことによって、母親の人生最後の時に安心を与えることができたそうです。
 
「オープンであることは人生のすべての段階において重要です。家族の間では特に意味のあることです。特に健康でなくなってしまった場合、遠慮せずにオープンにわがまま・希望をいうことが患者にとっては大事だと思います」とサラさんは言っています。
 
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介護をする側としてもいつ自分にヘルプが必要になるかという事を気にかかけている必要があるそうです。ヘルプが必要になる際のいくつかの典型的な徴候があるそうです。忘れっぽくなったり、何かを忘れたり、もしくはよく眠れなくなり始めたり、前よりもたくさん寝るようになり始めた時、飲めるお酒の量が減ったとき、食欲がなくなった時などがそれに当たるそうです。その他にも自分が疎外感を感じ始めたら要注意だそうです。以前行っていたジムに行かなくなったり、トランプゲームで遊ばなくなったり、社交的だったのにそうでなくなったりしている場合、もう一度そういうことをやってみる必要があるところに来ているのだとサラさんは言っています。
 
どうしてもそういったことができないといった場合、鬱になるリスクが高くなるそうです。そういう場合は自分のかかりつけの病院にヘルプを求めるなどの処置を講じるべきべきだそうです。介護疲れが長く続いているならば、診断と治療を受けることが重要だとサラさんは言っています。
 
しかし、実際には人に介護のヘルプを頼むのに時間がかかることが多いそうです。大体の場合自分や周りからの期待に関係しており、それが大きな要因でもあります。特に1930年代生まれの人は、『自分でなんでもやらないといけない。人にヘルプを乞うことは良くないことだ』と思っているようです。遠慮せずに自分の子供や友達からのヘルプを得ることが重要で、そうすることで深い鬱から抜け出すことができます。もし自分に介護を助けてくれる子供がいない場合非常に厳しい状況になるそうです。ヘルプがないことは疲労困憊で鬱な状態になって、病気になるリスクが高く、それは調査で明らかになっています。
 
また、フェイスブックなどのソーシャルメディアを利用して外の人とコンタクトを持つことが重要だとサラさんは言っています。サラさんはフェイスブックなどを利用している75歳以上の人をたくさん知っているそうです。そして、そういう人は増え続けているそうです。サラさんは次のように言っています。「多くの高齢者は他の親戚とのコンタクトを取ろうとしたり、実際にコンタクトをとっています。他の都市だったり、海外であったりもします。常に同じような状況にある人が沢山います。同じような状況にある人達とつながることでアドバイスを得られるチャンスが増えますし、仲間意識が得られます」
 

アドバイス2

 
次の看護師で睡眠と燃え尽き症候群の専門家であるエクステッドさんの介護をする人へのアドバイスを質問形式でご紹介したいと思います。
 
Q1.とても疲れていて、不安で眠れない時、どうしたら良いでしょうか?
A1. まずやるべきことは、ベッドから出て、いろいろな思いを断ち切ろうとすることからです。呼吸に集中し、思いを呼吸に合わせるようにします。これは不安を取り除く一つの方法です。人によっては本を読んだり、音楽を聴くだけで気分がよくなることもあります。また、逆に睡眠薬しか効かないということもあります。
 
Q2. どのようにして睡眠を阻害するまでのストレスを抱えないようにすることができますか?
A2. まずはおかしな兆候を見逃さないことです。何かを忘れたり、不安になったり、ちょっとしたことで泣いてしまうときは何かを考え直す必要があるということ表れです。そして、どうしたら行政や医療システムからより良い援助を受けられるかよく考えてください。あなたは介護される人にとって一番大事な人です。しかし全てを自分でやる必要はありません。何が自分の責任なのか、何のヘルプが受けられるのかをしっかり区別してください。そして、得られるヘルプは受けてください。おそらく、子供、親戚、友人に援助をお願いできるでしょう。自分一人ですべてこなす必要はありません。
 
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Q3. どうすれば介護疲れの状態から回復できますか?
A3. チャンスを見つけて、一日のいつでも寝られるときに寝てください。自分を大事にして、散歩をしたり、本を読んだりして面白いと思うことをすることが大事です。時間を細切れにして使ってください。ちょっとした時間、1時間、一日、それぞれの時間でできることをしてください。そうすることで将来に関する不安を和らげることができます。また、人は思っているよりも睡眠不足に耐えることができます。だから睡眠不足だといって過剰に神経質になる必要はありません。
 
 
Q4. 一番大事なアドバイスはなんですか?
A4. とにかく早めにヘルプを求めることです。子供、友人と協力すれば、医療、介護システムからヘルプを得られるとともに子供、友人からもヘルプを得られます。航空機に備え付けられている酸素マスクをイメージしてください。まずは自分自身を守らなければいけません。隣に座っている人を助けるよりも前に。
 
 

まとめ

今回のレポートでは、介護をする人に対するヘルプに関することを中心にお伝えしました。ペンション型介護施設のスタッフ、サラさん、エクステッドさんからのアドバイスを幾つかご紹介しましたが、共通しているのはとにかく早めにヘルプを得ること、そして自分を守ることということでした。得られるヘルプは得るということが結局介護する人・される人双方にとって良い結果になるということだと思います。

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