北欧研究所 藤井咲衣・安岡美佳
日本では、生活協同組合(以下、生協)は身近な団体です。例えば、生協が運営するスーパーは町中にあり、生協が自宅玄関まで食材や日用品を届けてくれることもあります。また、大学の学食を運営する場合もあります。現在、日本には6935万人の生協組合員がおり、国民の約半数は組合員として生協に出資しています。日本の高齢者の一部は、生協のヘビーユーザーで、冷蔵庫の八割が生協の食品で埋まっているなどの状況も珍しくありません。歩くのが困難になったなどの理由で、買い物に外に出るのが難しくなったりしても、生協の配達員が、毎週、配達してくれます。日本の97の生協(全体の約17.3%)では、高齢者見守りサービスを行っており、高齢者の方にとっては身近な組織の一つです。では、日本以外の生協は、どのような状況なのでしょうか。本稿では、生協の活動が活発であると言われる北欧の、中でもデンマークの生協について紹介したいと思います。
デンマーク最大の生協は、Coop Denmark(コープ・デンマーク)です。コープ・デンマークは消費者が出資する協同組合型スーパーで、全国に900以上の店舗があり、約600万人の人口に対し、一週間あたり700万人がコープ・デンマークを利用しています。コープ・デンマークは、スーパー事業のほかにも、金融サービスを行っているなど多面的な事業を展開しています。日本における生協のイメージと最も近いのがコープ・デンマークかもしれません。コープ・デンマークは、以前は、オンラインスーパーで注文した商品を自宅に配送するサービスを行っていましたが、2019年に配達サービスを取りやめています。日本とは状況が異なり、デンマークの利用者は、店舗の人たちとのおしゃべりを楽しみにしている層が一定数いるとのことで、その中の一部は、スーパーに行くことを楽しみにしている高齢者だそうです。いずれにせよ、わざわざ配送料を払って配送サービスを利用する人がそれほど多くなかったのだそうです。
コープ・デンマークは企業としての側面が強い団体ですが、一方、コミュニティとしてのあり方を追求した生協もあります。コペンハーゲンにあるコペンハーゲン・フード組合(Københavns Fødevarefællesskab)は食の共同体で、メンバーは、全ての人が利用者兼運営者です。会員は季節の野菜が6〜8種類入った野菜ボックスを定期的に店舗で受け取ります。同時に、単に野菜ボックスを購入するだけでなく、野菜の仕分けや配送準備、運営に関わる作業などの仕事に週3時間以上参加することが義務付けられています。誰かと役割を分かち合いながら関わるこの仕組みは、高齢者にとっても社会とのつながりを保つ、一つの場となっています。
また、似た形の協同組合として、高齢者を取り巻く環境を支援するiCareCoopsという取り組みがあります。これは高齢者を中心に、本人や家族、介護者、地域住民が組合員として共同でケアを担う仕組みであり、従来の「サービスを受ける側と提供する側」という関係を超えて、利用者自身も組織の運営に関わる点に特徴があります。EU全体を対象にしたプラットフォームとして構築されつつあり、デンマークでも少しずつ利用者が増えています。
一方で、デンマークの生協は、高齢者の社会生活の重要な一角を陰ながら支えてもいるともいえます。デンマークは、社会に根付く人々が主体的に関わり、自ら社会を造り上げていくという理念が根付いている社会です。高齢者であろうとも、国民の一人として社会に貢献し続け、自律・自立の精神で自分の人生を最期まで全うするという社会を構成する理念の一部を、生協がインフラとなり提供しているのです。
参考文献
厚生労働省. 令和6年度消費生活協同組合(連合会)実態調査<概要>
https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/98-1/gaiyou.pdf. 2026/3/24閲覧.
Coop Denmark. Coop Danmark A/S. https://coop.dk/. 2026/3/24閲覧.
NHH. Coop Denmark ends home deliveries.
https://www.nhh.no/en/research-centres/food/food-news/2023/coop-denmark-ends-home-deliveries/. 2026/3/24閲覧.
KBHFF. English summary of KBHFF. https://kbhff.dk/english . 2026/3/24閲覧.
iCareCoops. Home. https://soldemo.icarecoops.eu/ .2026/4/7閲覧.