前回のレポート(2016.02.11付 「孤独について」)ではシニアの孤独を避けるための方法についていくつか例を挙げましたが、その中に「人を助けることに生きがいを見出す」というものがありました。今回のレポートではシニアが「人を助ける」ことができるプログラムを一つご紹介したいと思います。
2005年ごろ違う世代の人と交流を図るための小規模なプログラムが始まりました。そのプログラムで違う世代が会える場所として選ばれたものの一つが学校でした。シニアの人に学校に補助教員として来てもらい、授業のサポートをしてもらうというもので、シニア・イン・スクール(スウェーデン語:Senior i skolan)と名付けられ、2012年に活動が始まりました。シニア・イン・スクールへの関心は高く、規模はすぐに大きくなるだろうと担当者は予測しています。学校の担任の先生と共通認識を持つために、事前に講習に参加し、補助教員としての役割(どこまでやるか、やらないか)をしっかり理解した上で教育現場に配置されるようになっています。 シニアの人にとっては新たな活躍の場ができ、また、子供たちにとっても、普段あまり交流することがないシニア世代と触れ合うことができ、双方にとってメリットがあることになったようです。シニア・イン・スクールプログラム補助教員として参加しているカイ・ダールマンさんも、「昔は子供の近くに両親、おじいちゃん、おばあちゃんがいたけれども、今では両親が近くにいれば良い方で、おじいちゃん、おばあちゃん世代の人と子供が交わる機会が少なくなってきてるからね」、と言っています。 学校の先生も、「最初はうまくいくかどうか少し不安に思っていたけれども、うまくいっている」と言っています。クラス内のグループワークをするときなどにも補助してくれる人がいると助かるそうです。
前述のカイさんは、5つの小学校で補助教員として働いています。カイさんは算数の授業のアシスタントをしています。報酬の無い完全なボランティアですが、子供たちからお金以上のものをもらっているとカイさんは感じています。カイさんはできるだけ長く続けたいと言っています。 子供たちもカイさんに満足しているようです。カイさんのクラスの子供たちは、「もっと長い時間カイさんといたい」、「進級するともうカイさんと会えなくなっちゃう」、「授業が楽しくて、いい感じ!」、「カイさんにとっても楽しいと思うよ。家にいてもつまんないだろうし」と言っています。
カイさん(中央)写真出典:SVT
マルグレートさん(68歳)は小学校中学年のクラスで補助教員として働いています。マルグレートさんも定年退職後「何をしたらいいのか?」と考えた人の一人で、最終的にシニア・イン・スクールプログラムでボランティア補助教員として働くことを選んだ人です。ボランティアだとお金をもらってやるよりも気軽にできるし、「必要とされている」ということを実感できることが気に入っているようです。学校の先生もマルグレートさんがいることで、子供たちにいろんなことを教えてもらえるし、クラスが落ち着いた雰囲気になる、と言っています
マルグレートさん 写真出典:GP
グニッラさん(72歳)は元高校の教師で、定年後この経験を役に立てないのはもったいないと思って、小学校の補助教員・代用教員として働き始めました。最初はシニア・イン・スクールプログラムの補助教員としてでしたが、高校教師をしていたという経歴が認められ、給料が支払われる代用教員としても働き始めました。代用教員になった今も、週に一度別の学校で、シニア・イン・プログラムの中の教員補助としても働いています。 教師は一日中忙しく、子供たちとの時間が取れない場合もあり、そういうときにクラスに子供たちと接することができる自分のような人がいると良い、とグニッラさんは言っています。また、自分にとっては他の教員と交流することで社会的なふれあいを持つことも大事だそうです。 グニッラさんは教えたことが子供たちに理解してもらえた瞬間が一番満足するそうです。そして今では、他の教員や児童にも信頼されているそうです。グニッラさんはどれくらい続けれるか分からないけど、やれるだけやると言っています。
グニッラさん(中央)写真:ヨールゲン・ヨハンソン
今回は学校でシニアが補助教員として活躍している様子をレポートしました。このように、活躍できる場所が増えるのはシニアにとって非常に良いことではないかと思います。また、今回ご紹介したシニア・イン・スクールの場合は、シニアだけではなく子供たちとっても良いことで、二重の効果があるのではないかと思います。