今回のレポートでは、定年退職後も積極的に働き続けるシニアについてご紹介したいと思います。どうして、そしてどのような形で働いているのかをレポートいたしたいと思います。
インゲルさん(女性)は毎週木曜日と金曜日に掃除道具一式が入った箱を車に積み込み、自分で運転して仕事に行っています。インゲルさんは掃除婦として働いているのですが、実は74歳です。インゲルさんは65歳で定年退職した時に、仕事をしないということは考えられず、次に何をすればいいのかを友人に相談したそうです。友人は掃除婦として働いたらいいんじゃないとアドバイスしてくれたそうで、それ以来掃除婦として働いています。現在はシニアを雇用している人材派遣会社に籍を置き4件の顧客を持っています(事務所の掃除、お年寄りの家庭の掃除、子供がいる家庭2軒)。インゲルさんはゆっくり丁寧に掃除をするよう心がけており、顧客にも評判がいいようです。 ご本人は仕事のスケジュール、仕事量、共にちょうど良いと思っているようです。また、インゲルさんは長期休暇はとっていません。「月曜日から水曜日、土日は休みだからね」と笑いながら言っています。収入は手取りで月3万円程度だそうです。ご本人は「お小遣い程度だけど、年金が少ない私にとっては大事な収入」だと言っていますが、「お金も大事だけど、適度に外に出て、人に会うのも同じくらい大事だと思ってる」とも言っています。掃除婦として働くことで、自分の病気を予防することができるし、余計な薬を飲まなくても済むと思っているそうです。 家にいるだけだと、刺激がなくて退屈な生活になってしまうので、このような形で仕事をすることは大事なことだと思っているそうです。また、ダンス、ジム、カルチャー講座、読書、孫、知人に会いに行くなどやりたいこともやっており、外に出て人生を楽しんでいるそうです。インゲルさんは、もちろん強制されるべきではないが、他の人にもこういう生き方をおすすめしたいといっています。
ケント=アーネさん(男性)は63歳で定年退職後、家で退屈な日々を送っていたので、奥さんの勧めでシニア専門の人材派遣会社に登録したそうです。仲間もほしかったそうです。現在では70歳になるイミーさんとペアを組んで仕事をしています。週4日、朝、ケント=アーネさん(男性)の家にシニアを専門に雇用している人材派遣会社から送迎車が迎えに来ます。そのまま仕事場に行き、仕事を始めます。ケント=アーネさんとイミーさんは普段は、コーヒーブレイクをとることはあっても昼食のための休憩は取らないそうです。ケント=アーネさんの昨年の収入は手取りで150万円程度だったそうです。これも貴重な収入に違いありませんが、ケント=アーネさんはお金よりも、仕事をすることの楽しさを味わうこと、体を使うこと、そして社交的であることがより大事だと言っています。
ここでご紹介したケースのように、シニアに働く場所を提供するためにはシニア専門の人材派遣会社の存在が欠かせません。シニア人材派遣、年金受給者人材派遣、ベテラン人材派遣、ベテランパワーといった名前のシニアを専門に雇用している人材派遣会社があります。何れもまだ働きたいと思っているシニアに働く機会を提供しようという機運が高まった2007~2010年に設立された会社です。
人材派遣会社のホームページ
シニアを専門に雇用している人材派遣会社を経営するアンデッシュさんは「今日では、年金をもらっているけど働いてもいる、と言っても何もおかしくありません。現在登録している人の最高齢は76歳ですが、年齢制限(上限)はなく、68歳で働くのは普通です」と言っています。 働く時間は人それぞれだそうです。一か月のうち数時間しか働かない人もいれば、普通の仕事と同じように週40時間近く働く人もいます。働くモチベーションは、男性と女性で異なるそうです。男性の場合はとにかく働きたい、何かしたいというのが主なモチベーションで、女性の場合は社交的な生活をするためにという理由が最初に来るそうです。また、収入を得ることに関しては、以前何の仕事をしていたか、一人暮らしかどうかによって少し変わるそうですが、皆さん基本的にはそれほど重要視していないということのようです。 依頼内容としては、小さな街では掃除、ガーデニング、大工仕事、塗装などが多く、個人からの依頼では、子供の子守、洗濯、介護の補助などが多いそうです。また、大都市では企業のスタッフ補助などが多いようです。 シニアの仕事について研究しているルンド大学の二ルソン博士は人材派遣会社は登録している人が自由に職種や労働時間を選べるようにすることが大事だといっています。定年退職後どのような形で働きたいのかあらかじめ考えておくことが大事だとアドバイスしています。
今回のシニアレポートでは、定年退職後も積極的に働き続けるシニアについてお伝えしました。シニアを専門に雇用する人材派遣会社が誕生してから10年弱、人材派遣会社が活躍の場を提供し、定年後も積極的に働き続けるというスタイルが確立され、そして一般に認知されるようになってきたように思われます。