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サードエイジを支える高齢者住宅 コミュニティ

幸せの国と言われるデンマーク。2024年3月に発表された幸福度ランキングでは全体で2位、60歳以上のランキングでは1位となっており、例年上位にいるイメージですが、実は孤独が問題視されています。孤独は若者だけでなく高齢者も同様で、サードエイジに当てはまる50〜70歳の方々は(小田. 2001)、定年退職後に社会との繋がりがなくなることで孤独を感じる人が多いようです。そこで、デンマーク人のサードエイジの現状と、孤独を解決するために作られた高齢者向け住宅コミュニティを紹介いたします。


2024年3月に発表された全体ランキング。世界ハブのホームページより2024年3月28日引用。

デンマークの高齢化社会の現状

2042年には人口の約25%が65歳以上になると言われているデンマーク。65歳以上の人々はサードエイジと呼ばれていますが、サードエイジの暮らし方に注目が集まっています。

サードエイジは介護を必要としないものの定年退職により職を失う人が多い年齢と認識されており、デーンエイジ協会(DaneAge)によると5089歳のデンマーク人の3人に1人は長く働き続けたいと考えているようです。

また、独身で過ごすデンマーク人は年々増加し、退職と同時に社会的ネットワークや家族の繋がりが薄れていく傾向にあります。

そこで近年、高齢者向け共同住宅が注目を集めています。リアルダニア(Realdania)によれば、8万人の高齢者が高齢者向けの共同住宅への入居を希望しており、2040年までに14万人以上に及ぶと予想されています。

共同住宅による高齢者への影響

共同住宅で暮らすことにより、孤独感の軽減、社会的コミュニティへの参加、生活の質の向上などが期待されています。孤独は病気や早期死亡のリスクを高めると言われており、サードエイジで構築されるコミュニティや人間関係は、その後のフォースエイジでの孤独を防ぐことができることから、サードエイジの生活環境が重要だと考えられています。

共同住宅は自治体との連携も重要であり、医療サポートの充実化や地域のボランティア活動への参加を促し、コミュニティを広めていくことが期待されます。

リンケビングにある高齢者向け住宅コミュニティ

デンマークの自然地区、リンケビング(Ringkøbing)にある住宅コミュニティを紹介します。

リアルダニア・シティ&ビル(Realdania By og Byg)によって建設された住宅コミュニティです。特徴的な点は入居者同士の関わりを重要視した住宅のデザインです。

従来の共同住宅は平屋で、共用の庭が建物の周辺にあるのが一般的でした。しかし、ハヴトルン(Havtorn)と名付けられたこの建物は、23階建ての建物が3個に分散して配置されており、それぞれの建物に共有施設が混在しています。例えば、ワークショップをするスペースやスポーツ用品の保管庫、野外プールなどです。

そして、3つの建物の中心には共有スペースがあり、各建物にある共有施設に面しているため住んでいる人みんながアクセスしやすく日常的に人の集まる場所となっています。


ハヴトルンを上から見た画像。GUSTIN LANDSKAB社のホームページより2024年3月28日引用。



リンケビングの自然でアクティビティをする様子。GUSTIN LANDSKAB社のホームページより2024年3月28日引用。



共有部分と住宅の建物を分けないことで、日常生活におけるコミュニティへの参加を促進することが目的となっています。

そのため、自分から頑張ってコミュニティを広げようとしなくても、自然と関わりを持つことのできる空間や環境作りがされています。

また、西ユトランド地域の自然を生かしたデザインにもなっており、住宅の周りにある自然が大きな共有の庭のような機能を果たしているのも特徴です。

住宅も無垢材の床を使用したり、室内に自然光がたくさん入るようなデザインになっています。

おわりに

若者の社会参加やコミュニティ創出は世界的にも注目されているイメージがありますが、定年退職をしたサードエイジの方々のコミュニティや孤独という課題に目を向けるのも重要だと感じます。まだ働けるけど定年退職された方が、このような共同コミュニティに入り、地域ボランティアへの参加や住宅の中でもコミュニティ創出は、地域の活性化にも繋がると同時に、フォースエイジの生活環境の向上にも影響を及ぼすという点が興味深いと感じます。

日本も少子高齢化が問題となっていますが、退職をしたサードエイジの方々も社会と関わりコミュニティを広げることで第3の人生を楽しめるような仕組みや居場所が増えることを期待します。