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高齢者の住まい
シニア・高齢者の住宅

住居はシニア・高齢者にとって関心の高い事項で、いつも様々なことが議論されています。今回は、シニア・高齢者の住宅事情についてお伝えしようと思います。

■未来型高齢者向け住宅

現在、スウェーデンのエレブロという街で未来型の高齢者向け住宅の建設が進んでいます。近々、次世代の高齢者向け住宅に関する発表会で詳細が発表されることになっていますが、デジタル技術を多く取り入れた住宅になるようです。例えば最新の音響技術を駆使したシステム、床に倒れた時に感知できるセンサーを埋め込んだ床、うるさい音が鳴らない静かなアラーム、従来型の鍵の撤去(携帯のアプリで開け閉めをする)、建物全体でWiFi利用可能にする、インターネットテレビ、入居者用の特別チャンネル(情報の共有のためなどに用いられる)、Facebook・Skypeなどを用いた連絡などなど色々なデジタル技術が導入されるようです。5階建て68部屋で、アクティビティールームや中庭などもあるようです。 上記のデジタル技術はこれまでに施設の利用者(入居者・訪問介護士など)の候補になる人たちからのフィードバックを基に計画されたものだそうですが、大学とも共同でさらに新しい技術もテストする用意もあるとのことです。

 

 完成予想図 出典: エレブロ市Youtubeチャンネル   

■マルガレータさんの場合

前述のような、未来型の住居に住むようになる人がいる一方で、問題を抱えている人もいます。マルガレータさんの場合がそうです。最近マルガレータさんはご主人をなくして、それまで住み慣れた一軒家に住み続けるか、あるいは小さなアパートに移るか決断を迫られています。健康状態が良くなくパートナーの助けがないと生活できない、というような状態であれば高齢者住宅などに引っ越す決心もつくのでしょうが、マルガレータさんは健康で、特に持病もありません。そのために迷っています。前もってこういった状況の準備をしていたつもりだったようですが、いざとなるとやはり難しいようです。子供や孫たちは600km近く離れたところに住んでおり、子供たちは「私たちの近くに引っ越して来たら?」と言っているそうですが、マルガレータさんは友達もいて、住み慣れている街を離れたくないそうです。マルガレータさん自身は住み慣れた家に住み続けたいと思っているのですが、問題がいくつかあります。まず、家のローンの支払いも残っており、銀行は利子が上がればマルガレータさん一人では返済能力がないと考えているようです。 マルガレータさんは「生活費は銀行の人が考えているより、少ないお金でやりくりしているし、贅沢もしていない」と反論していますがなかなか難しい問題のようです。また、子供たちも家(財産)の一部を相続したがっているようです。 しかし、今の家に住めなくなるからと言って、別の家に引っ越すとしても問題があります。スウェーデンでは家そのものを買うのではなく、家に住む権利を買うことが一般的です。家の大きさや場所により値段が大きく変わりますが、500万円から1.5億円程度で売買されています。マルガレータさんのように大昔に家に住む権利を買い、その家にずっと住み続けていて、その家を売ろうとすると、購入時と売却時の価格の差が大きく、多額の税を払うことになります(マルガレータさんの場合、300万円程度のローンで購入できた家の居住権利が、現在では3000万円まで値上がりしています)。そのため、税を払うことも難しく、高齢であり定年退職しているために新たに住宅ローンを組むことができないため、新たに別の家の居住権を買うことも難しい状況です。 結局、子供たちが育った想い出の家ということもあり、財政面などで子供たちの助けを借りて、住み続けることができるようになりそうなようですが、スウェーデンでは成人して一度家を出るとその後、「親の老後の面倒を見る」というようなことは基本的にないので、特別なケースと言えます。 この件は老後の住宅状況を考えさせられます。高齢者向け住宅の建設のみならず、高齢者が引っ越しやすい普通の家の建設、引っ越しがしやすいような、あるいはそれまでに住んでいた家に住み続けられるような税制上の優遇などが望まれているようです。  

■スペイン風住宅

粉雪が舞う3月にも関わらず、ガラスの壁と屋根で囲まれた中庭にはヤシの木が茂り、南国の様相です。スペイン風にアレンジされた中庭で人がくつろいでいます。これは最近人気の退職者向けのリゾート型住居の様子です。中庭でくつろいでいるのは住民たちです。定年退職した人を中心に80人近くが住んでいます。その一人、ラーシュさんは定年後、子供たちの近くに住むためにこの家に引っ越してきました。

   

リゾート型住居の住民 写真: トーマス・セーデルベリィ

 ガラスで外の騒音などはシャットアウトされ、ひとたび居住空間に入れば、中庭は明るく、緑が生い茂り、外部の薄暗さや寒さからは無縁となります。薄暗く、寒い日が続く冬場は特にこの環境がその”威力”を発揮すると言っていいでしょう。 中庭にはペタンク(スウェーデン語ではボウレ)と呼ばれる球技(カーリングのようなルールの競技で、カーリングのストーンの代わりに金属製のボールを投げる)をする場所も設けられています。ヨガ、気功、瞑想、サッカー観戦など住民の間で様々なアクティビティーが行われています。中庭には共同のトイレもあり、中庭で何かアクティビティーをしているときはわざわざ自分の部屋に戻る必要はありません。 ここにはご近所と強いつながりを持ちたい人たちが集まっています。住んでいる人は皆、口をそろえて「歳をとると社交的でなければならない、さもないと孤独になる」、と言っています。一人住まいの人も近所に人がいると孤独な思いをすることがなく、また何かあった時も安心です。安全面もしっかりしており、限られた人しか居住空間にアクセスできないようになっています。

   

 リゾート型住居 写真: トーマス・セーデルベリィ

■まとめ

今回のレポートでは、高齢者の住まいについてレポートしました、未来型の施設、リゾート型の施設に住む人がいる一方で、住む場所に困る人もいます。高齢者の住居に関する議論の種は尽きません。誰もがさらに快適に、さらに安心して住める住宅づくりが求められています。