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シニアのためのデジタル機器の講習会

今回のレポートではシニアのためのデジタル機器に関する講習会の様子についてお伝えしようと思います。

■現金おことわり

スウェーデンでは現金を使用しない、いわゆるキャッシュレス化が進んでいます。最近は筆者の周りでも「現金での支払いお断り」というお店が増えてきました。緊急時のために現金を少しだけ財布の中に入れてはいますが、ここ1~2年現金を使った記憶がありません。また、先日10年ぶりぐらいに、日本円の現金をスウェーデンクローナに両替するために両替店へ行きましたが、窓口の人から「日本ではまだ普通に現金を使っているのか?」と聞かれたほどです。 スウェーデンでは支払いのほとんどがクレジットカードで行われますが、そのほかにSwish(スウィッシュ)と呼ばれる電子決済システムを利用した支払いも日常的です。このSwishはスマホのアプリを使い個人の間で現金のやり取りをすることも可能です。それにしても先日、教会に行ったときにろうそく代をSwishで支払えるようになっていたのには驚きました。 また、銀行の役割も変わってきています。今、銀行に行っても行内にお客さんの姿を見ることはまずないと思います。いつもガランとしています。現金を数えてる姿もなく、おそらく銀行内に現金はほとんどないでしょう。今は利用者もインターネットバンキングで処理するためです。

 

■シニア向けデジタル機器講習会

このように現金が使えなくなると困るのが、これまでスマホ、パソコンなどのデジタル機器を使用してこなかったシニアの方たちです。そのためシニアのためのデジタル機器講習会が頻繁に開かれています。ひと昔前のいわゆる「パソコン講習会」ではインターネットへの接続の仕方、ワープロ、表計算ソフトの使い方といったものでしたが、最近ではネットの利用方法が中心になっているように思います。また、パソコンだけではなく、スマホやタブレットなどのデジタル機器も対象になっています。 先日ストックホルム南部のハーニンゲ市が開催したデジタル機器に関するシニアのための講習会は満席でした。高校生・大学生が講師役となり、3時間の講習の間にシニアの方たちはいろいろ質問をし、デジタル機器でやりたいことなどを聞いていました。市の担当者によると講習会は毎回盛況で60人~100人の人が参加するそうです。市としても様々なサービスをデジタルで提供しているので、そういったものをフルに活用してもらうためにも住民のデジタルスキルを上げてもらう必要があると考えているようです。 「どんなことでも聞いてください。恥ずかしい質問というものはありません」と担当者は言っています。 参加者によってやりたいことは様々です。スマホを使って前述のSwishのやり方を知りたい人、スマホからパソコンへ写真を転送する方法を知りたい人、銀行振込のためなどにインターネットバンキングのやり方を知りたい人、Skype、簡単なプログラミングをしたい人などなど様々です。 参加者の一人は「デンマークにいる家族とSkypeしたかったけど、やり方がわからなかった。講習会を受けてできるようになった。本当に良かった」と言っています。また、別の参加者はスマホからパソコンへ写真を転送する方法を教えてもらったそうです。でも、インターネットバンキングで支払いなどをするのは嫌だと言っています。宛先を間違ったり、金額を入力し間違えたりするのが怖いそうです。 夫婦で参加した人もいます。 講師役の学生、ノラさんが懇切丁寧に教えてあげています。旦那さんのエミリオさんは、「そんなのもうできるよ」と冗談半分に行っていますが、奥さんのイボンヌさんは、「何にもできないくせに」と突っ込みを入れていました。家ではイボンヌさんが支払いなどをインターネットバンキングで処理しているそうです。銀行に勤めている娘さんにやり方を教えてもらったそうですが、デジタル機器を使ってできるのはネットバンキングだけだそうです。ノラさんがご主人のエミリオさんのスマホに入ってるアプリや、写真の共有のやり方などの説明をしています。しかし、イボンヌさんはいわゆるガラケーを使っており、スマホにするつもりはないそうです。 「面倒くさい。一度息子からスマホをもらったけど、返した。電話出来て、テキストメッセージが送れればそれで充分。」と言っています。

    

講習会での様子。左からエミリオさん、ノラさん、イボンヌさん 写真: マリア・ローセンレーフ

   講習会では質問する時間がなかったときに備えて、よくある質問をまとめた冊子も用意されています。 「ネットでどうやってニュースを読むか」、「アプリとは何か」、「料理のレシピの見つけ方」などなど色々なことが書かれています。また、コーヒータイムもあり、質問についてディスカッションしたりTIPsを交換したり、アドバイスしたり、心配な点を話したりしています。 主催者は「孫に聞きたいけど、面倒くさがって答えてもらえないような質問なんかもしてください」と言っています。「若い子たちはデジタル機器の使い方をわかりやすく説明するのが上手で、自分たちにそういう才能があるということに気づいていないという子も多い」と言っています。若者とシニアの交流のためにもこういった講習会は良いと思っているそうです。講習会を終えた参加者からは、次のレベルの講習会はあるのかとよく聞かれるそうです。今のところそういった講習会はありませんが、用意しなければいけないと思っているそうです。   

■まとめ

今回のレポートでは、シニアのためのデジタル機器の講習会の様子についてお伝えしました。デジタル機器を使えないと、日常生活に支障をきたすようになってくるため、ある程度デジタルスキルを身につけないといけない状況ですが、ネガティブにとらえずに新しいことを学ぶ機会ととらえている人が多いようです。今回ご紹介したような講習会に参加して積極的に新しいことを学ぼうとすることは若さを保つためにも役立つのではないかと思います。