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シニア世代のアルコール摂取について

今回のレポートでは、シニアのアルコール摂取に関するスウェーデン国内での最近の調査結果をお伝えしたいと思います。  

■研究結果

アルコールはシニアに限らず、どの世代においても病気や事故のもとになりえます。シニア世代のアルコール摂取量は総じて若い世代よりも少ないそうですが、アルコールに関連した病気になったり、怪我をしたりするリスクは、シニア世代の方が高いそうです。研究者によると、少量のアルコールでも病気と事故のリスクは高いそうです。最近スウェーデン国内の大学、病院、研究機関が共同で、国内・海外のデータをまとめました。スウェーデン医師会(Svenska Läkaresällskapet)、ヨーテボリ大学、スウェーデン看護師協会(Svensk sjuksköterskeförening)、未来への責任基金(Stiftelsen Ansvar för Framtiden)、国際禁酒協会スウェーデン支部(IOGT-NTO)の共同研究によるもので、高齢者のアルコール摂取に関するレポートが作成されました。

   

 レポート「アルコールと高齢者」(表紙)

 近年、シニア世代のアルコールが原因とされる病気や事故が増えてきています。シニアの数そのものが急激に増加しており、そのことも原因の一つと考えられています。調査によると、75歳以上の女性で健康に関わるようなアルコールの摂取の仕方をしている人の割合は1977年にはわずか1%だったのが、2006年には10%だったそうです。また、男性に関しては1977年では19%だったのが2006年には27%に増加したそうです。 シニア世代が、アルコールによって健康を害しやすいのは筋肉の量が年齢とともに減少することが関係しているようです。筋肉には水分が多く含まれており、アルコールが水に溶けることを考えれば、筋肉が減って水分が減ると、アルコールが水に溶けずに「散らばっていく」ような形になり、血中のアルコール濃度の増加につながると考えられています。若者に比べて、シニアの場合、血中アルコール濃度が低くても交通事故を起こす確率が高いそうです。 また、このほかに前述の研究機関が書いたレポートでは、「少量のアルコールは体に良い」とするよく聞く説に強い疑問を投げかけています。「体に良い」、「体に良くない」とする結論、両方同じ程度に研究結果があるそうですが、「体に良い」とする研究結果(結論)は誇張されすぎているようです。レポートの著者の一人は「適切なアルコール量というものは存在しない。これは新しい結論ではないが、一般に周知するのが難しい」と言っています。  

■新たなガイドの必要性

昔ながらのおばあちゃん像は今ではあまり当てはまらないようです。現代ではシニア女性はもっとお酒を飲むようになったようです。以前は高齢女性はそれほどお酒を飲みませんでしたが、今はそうではないようです。このことに関して、アルコールの専門家でカロリンスカ医科大学のアンドレアスソン教授は「医療現場では患者と医者のコミュニケーションが取れなくなってきているのではと言われてますが、多くのシニアがアルコールに関して医者とコミュニケーションをとる必要がある」と言っています。


   

 アンドレアスソン教授 (大学のHPより)

 定年退職後、お酒の量が増えるのは異常なことではないそうです。仕事のストレスから解放され、生活が変わり、自由を謳歌できる。楽しくなり、自然とワインの量も増える、ということのようです(日本では仕事のストレスでお酒の量が増えるというパターンもあるかもしれませんが、スウェーデンではストレスがあるとお酒を飲む気分になれないという人が多いようです)。また、シニア世代になると、自由な時間も増え、旅行する機会も増えます。旅行中は外食することになり、レストランではお酒が提供されます。こういったことからもアルコール摂取量が増える傾向にあるようです。 シニア世代がアルコールを沢山摂取することは多くの調査でわかっています。シニア世代になると経済的な余裕も出てきて、社会の新しい飲酒習慣(パーティーなどでよく飲むようになった)も手伝って、アルコールの消費量を押し上げているようです。 アンドレアスソン教授はシニアのアルコール問題は急激に大きくなってきていると言っています。「シニア世代になると病気になることも増え、薬を飲むようになり、体も弱くデリケートになる。そういった体にはアルコールの影響が大きくなる。今から対策を練っていないと将来大変なことになる。アラームが鳴っている。行動をとるときだ。人口統計を見ても、今後、シニア世代が増えるのは明らか。現在でも、もう充分多くのアルコールに関するケアが必要なシニアがいるのに。将来対処できなくなってしまう」とも言っています。 アンドレアスソン教授は飲酒に関するシニアのための新しいガイドラインが必要だと考えています。現在の基準では男性の場合1日に2スタンダードグラスとされています(330mlのビールが1スタンダードグラス(12gのアルコール)に相当します)。女性の場合は1日に1.3スタンダードグラス(一日15g)とされています。アンドレアスソン教授はこれはシニアには多すぎると言っています。シニアには平均一日に1スタンダードグラス(12g)あるいは一回の機会に最大2スタンダードグラス(24g)が適当であると提案しています。そして、社会庁(保健福祉庁)が音頭をとって、国レベルで飲酒に関するガイドラインを作るべきだと言っています。

   

1スタンダードグラスの例(左から低アルコールビール、ビール、赤ワイン、ポートワイン、ウイスキー) 1cl=10ml

■まとめ

今回のレポートでは、シニアのアルコールの摂取に関する調査研究結果についてお伝えしました。「少量のお酒は体に良い」とする説は否定される方向に行っているようで、「アルコールを摂取してもいいことは何もない」という医療関係者も多いようです。いずれにしても、適度にアルコールをたしなむのが良いようです。シニア世代は特にそのことを意識したほうがよいという調査結果のようです。