今回のレポートでは、前回のレポートに引き続き、年金制度とシニアのワーキングスタイルとの関係についてレポートしたいと思います。
雇用主は69歳以下の人に退職を強要するべきではないとする法案に関する審議がなされています。この件については国会の作業部会で以前合意しており、政府はこの件について国会で審議する手続きに入りました。この法案が成立すれば、現在67歳までの人が対象の労働者保護法が69歳までに引き上げられます。まず、2020年に67歳から68歳に引き上げ、その後3年かけて68歳から69歳に引き上げる予定になっています。 労働大臣のイルバ・ヨハンソン氏は、「職場に残る権利を持つ人の年齢を徐々に上げていく必要がある。また、同時にできるだけ長く働けるように、労働環境の改善も重要になってくる」と言っています。
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55歳以上の大部分の人が65歳までに年金生活に入ることを考えている(スウェーデンでは現在のところ早くて61歳から年金が支給される)。55–65歳の62%の人が、65歳までに年金生活に入ることを考えています。このことは残りの約40%の人が経済的な理由あるいは定年退職後の生活を充実させるために働き続けることを意味しています。男性よりも女性の方が経済的な理由を上げる傾向にあるようです。逆に、体力的に働けないという人もいるようです。25%の人が65歳以降に働くことは体力的に無理だと答えています。また、ほぼ同数の人が精神的にもきつく、仕事のテンポが速すぎると答えています。 「長く働くということは支給される年金額が高くなるということ。また、うまくやっていくためには、新たな労働市場が必要で、長く働けるように生涯学習を通した教育の可能性を探るべき」と銀行のエコノミストは言っています。
エコノミストのエルクエス氏 写真:本人のtwitterページより
前述のように調査によると65歳以降も働きたいと考えている人の割合は定年が近づくにつれて増えてくるようです。前述のエコノミストは「楽しいので働き続けたいという人が多い。必要とされていると感じることができる環境にいることが大事」と言っています。雇用者の方も長く働いてもらうことを積極的に考えているようです。労働者の7割近くの人が「雇用者は65歳以上の人が働くことをポジティブにとらえていると感じている」と答えています。長く働いて、年金受給額を上げたいと思っている人と、長く働いてもらって構わないという雇用者側の考えがうまくマッチしていて良好な関係が生まれているようです。
年金支給開始年齢は、現在は61歳ですが、2020年からは62歳に、2023年には63歳に2026年以降は64歳と、段階的に引き上げられる予定になっています。 保証年金の支給開始年齢も段階的に引き上げられています。今のところ、生年別に分かれており、以下のようになっています。 1958–1960生まれ: 66歳 1961–1963生まれ: 67歳 1964–1969生まれ: 68歳 1970–1982生まれ: 69歳 1983–1996生まれ: 70歳 1997–2012生まれ: 71歳 2013以降生まれ: 72歳 これらは年金制度を維持するための措置ですが、年金支給開始年齢を引き上げるのとは別の解決策を見つけるべきだと言う人もいます(年金の月々の支払額を上げる、仕事を始める年齢を早くするといった大胆な案もあるようです)。
今回のレポートでは、前回のレポートに引き続きシニアの働き方と年金についてお伝えしました。労働者の保護、労働環境づくり、個人の意識改革、大胆な年金支給制度の改革など様々な角度から年金制度を維持するための方策、長く働いてもらうための環境づくりが行われているように思います。