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ポジティブな高齢者
介助犬
犬とお年寄りの関係

今回のレポートより、スウェーデン在住の松下幸代が担当します。

看護師として日々接するお年寄り、その家族、近所のお年寄りとの交流を通した生のレポートなどをお届けします。

この時期、0度を下回るのが例年ですが、ここ最近(2020年1月)の平均最高気温は5度前後。
多くの人が、本当の冬を迎えぬままに春が来てしまうのではと、不安と戸惑いの混ざった思いをこぼしています。
そのような現在、よく見かけるのは、愛犬と散歩を楽しむお年寄りたちです。ゆったりと犬のペースに合わせて歩く人、犬と一緒に早いテンポで歩みを進める人、まるでカップルのように、買い物時も通院時も犬と一緒という人など様々です。



今回は、ここ5年以内にスウェーデンで調査された「犬とお年寄りの関係」についての研究を紹介したいと思います。

Swall博士らは末期の認知症を患うお年寄りに対する介助犬の効果を、介護者の視点から調査を行いました。
介助犬とは、認知症患者が末期に患う、重度の身体的、精神的な苦痛を和らげるよう訓練された犬です。
介護者は患者と介護犬が交流する際に、犬をガイドする役割をします。博士らは、介護者へのインタビューを行い、その結果を質的に分析しました。

すると、介助犬とのふれあいが認知症患者の体を温め、認知症患者の発言を促している傾向が見られました。
もし、介助犬がいなければ、認知症患者は口を開くこともなかったということです。
介助犬と患者の身体的な接触が認知症患者の痛みと不安を軽減し、また介助犬がいることで、患者の幸福感が増したのです。
筆者が興味深く感じたことは、介護犬の患者に対する対応が、患者が困難な状況を前向きに考えることを促したということです。
介助犬は認知症患者の存在を認め、現在に集中することを促しました。博士らは介護犬と認知症患者の交流は、認知症患者に良い影響を与えると結論づけました。

Lundqvist氏らは、介助犬が障がい者の生活の質、幸福度、日常の活動レベルにどのような影響を与えるかを調査しました。
障がい者である研究参加者全員が、以前より犬と生活していました。研究参加者の平均年齢は44歳で、最高齢の参加者は68歳でした。
研究で用いられたのは身体補助の訓練を受けた犬、糖尿病患者に警告をする訓練を受けた犬、癲癇を警告するよう訓練された犬、聴覚障がい者に対して、
サポートするよう訓練された犬でした。

研究参加者は一般の集団と比較して、生活の質が低いことが分かりました。
参加者は訓練を受けた犬とのトレーニングを受け、3ヶ月後に生活の質、幸福感、身体活動のレベルの再評価が行われました。
この3つの点において、特筆した改善は見られませんでしたが、参加者の大多数が再評価時に、
家の外で過ごす時間と社会活動に費やす時間が増えたと報告しました。研究者らは介助犬が障がい者の緊張を緩和し、自立を高め、
社会的孤立のリスクを減らしていると結論づけています。

Mwenya氏らは、犬は飼い主の身体活動への支援と動機付けを提供することにより、飼い主の心血管疾患のリスクを軽減するのに有益と仮定し、
犬を飼っていることと心血管疾患、および死亡との関連を最大12年間の全国ベースのデータを元に調査しました。

結果、単身および複数世帯で、犬を飼っていることが、死亡リスク、心血管疾患による死亡リスクの低下に関連していることが分かりました。
その一方で、単身世帯に限った場合、犬を飼っている人に心血管疾患患者が多いことが分かりました。
猟犬を飼っていることは心血管疾患のリスクが最も低いことと関連していました。研究者らは犬を飼っていることは心血管疾患のリスクを低下させ、
世帯の大きさに関わらず死亡率の低下につながると結論づけています。

今回ご紹介した研究は、お年寄りを含めた人々の生活の質の向上に犬の存在が良い影響を与えていることを示しています。

スウェーデンでは犬が飼い主の監督なしに過ごすことができるのは最大5時間と法律で定められ、
日中は最低限6時間ごとの散歩が義務づけられています。家族が日中、家にいないなどの理由で、就労世代の家庭が犬を飼うことは難しいと聞きます。
この点で、退職後のお年寄りが犬と散歩する光景をよく見かけるのは、自然なことのように思えます。犬に限らず動物との暮らしは飼主としての責任が問われます。
お年寄りが動物とともに健康と生活の質を保つことができることは素晴らしいことですね。


参考
Lundqvist, M., Levin, L.Å., Roback, K., & Alwin, J. (2018). The impact of service and
hearing dogs on health-related quality of life and activity level: a Swedish longitudinal
intervention study. BMC Health Services research, 18(1), 497. doi: 10.1186/s12913-018-3014-0.

Mubanga, M., Byberg, L., Nowak, C., Egenvall, A., Magnusson, P. K., Ingelsson, E., & Fall,
T. (2017). Dog ownership and the risk of cardiovascular disease and death - a nationwide
cohort study. Scientific Reports, 7(1), 15821. doi: 10.1038/s41598-017-16118-6.

Swall, A., Craftman, Å., Grundberg, Å., Wiklund, E., Väliaho, N., & Hagelin, C. L. (2019).
Dog handlers' experiences of therapy dogs' impact on life near death for persons with
dementia. International journal of palliative nursing, 25(2), 65-71. doi:
10.12968/ijpn.2019.25.2.65.

Jordbruksverket. (2020). Så sköter du din hund. Hämtad 29 januari, 2020, från
https://www.jordbruksverket.se/amnesomraden/djur/olikaslagsdjur/hundarochkatter/skotselav
hundochkatt/saskoterdudinhund.4.207049b811dd8a513dc80001977.html